「んなッ!?」
「「ユキ、何をーー!?」」


抱きしめられたヤッファは、突然の事態に狼狽え、赤面している。

俺の後ろでは、アティとレックスが顔を真っ赤にして絶叫している。これは面倒なので無視する。
護人達は呆然としながらも、これまた顔を真っ赤にしている様子だ(ファルゼンはわからないが)。


俺はヤッファの耳元で、ヤッファにしか聞こえないように囁いた。



「おいテメーシマシマ、マルルゥに何教えてやがる。何が女顔だこの野郎。他にも特徴あるだろ刀持ってるとか黒い長髪とか。それとも何か、俺の特徴は女顔だけか?おいコラ言って見ろよ、それ以外無いかどうか。まあ今回は許してやるが、次はねーぞ。次同じこと言ったらその毛全部刈り取ってやるからな、わかったかボケが」



うふふふふ、まあ忠告だとでも思ってもらえればいいさ。


抱きしめていたヤッファを離し、真っ青になっている顔に柔らかく微笑みかけ、先程の場所へ戻った。



「ユキ……ヤッファさんに何を言ったんだ?あんなに青ざめて……」
「別に何でもないよ!」
「嘘です……あの反応、凄い身に覚えがありますよ。あっ、まさかマルルゥがアレした時にあっさり引き下がったのって、このための……」
「アァァァァティィィィちゃぁぁぁぁぁん?ちょっと俺、君と二人きりでお話しとかしたいなぁ?」
「ひぃ!?ごめんなさい、何でもないですっ!?」



流石は我が旧友、引き際を心得てますねー、偉い偉い。

軽ーく笑顔で詰め寄ってみると、アティは泣きそうになりながら謝ってきた。



状況が落ち着いたのを見計らって、キュウマが少々怯えつつ話を切り出した。



「あ、あの……本題に入っても宜しいでしょうか?」
「ああー、話の腰を折って悪かった。全部ヤッファのせいだけどね!」
「あぁ?何でそう……「あん?」……俺のせいです」


ジトリと睨むと、ヤッファは青ざめつつ、サッと俺から顔をそらした。

さっきの話、わかってもらえたみたいで嬉しいよ!
でも、人の話を聞く時は目を見て話さなきゃね!


……とおちょくりたい所だが、いつまでも話が進まないのは申し訳ないので、それはまた次の機会にしよう。



「……あー……まあ、マルルゥに聞いたとは思うが、あんたらに島の紹介をしたいっつーわけだ」
「やっぱり、口で説明するより実際に会って、話をした方が、より理解も深められるでしょうからね」


マルルゥに聞いた通り、やはり島とその住人の紹介が目的のようだ。
理解しようとしてくれてるのは嬉しいが――どうにもよそよそしい雰囲気だな。


アティとレックスは気付いていないようだが、護人達の様子や話し方から察するに、隠していることがある。


仕方ない。
後々面倒なことにならないように、俺が切り込んでおいてやるか。



「それって正しく言い直せば、"俺達に島の住人を紹介する"んじゃなく、"島の住人に、俺達が安全な存在かどうかを見せる"んじゃないのか?」



全員を見渡しながら、出来るだけ静かに、ゆっくりと言う。
その言葉を聞き、護人達は全員目を見開き、俺を凝視した。


うわー、何か俺が悪者になりそうな雰囲気だけど、まあそんな時もあるよねぇ。


各々から注がれる厳しい視線を逸らさず、真っ直ぐに見つめ返すと――意外にも、ファルゼンが最初に口を開いた。



「……ソノ通リダ。今回呼ンダノハ、オ前達ヲ、島ノ住人ニ見セルタメナノダ……」
「ファルゼン?」



アルディラがファルゼンをキッと睨みつけるが、ファルゼンはそちらに顔を一度向けただけで、気にした様子もない。



「確かに……ファルゼン殿の、そしてユキ殿言う通り、真の目的はそれなのです」
「まさか、こうもあっさり勘付かれるとはな」



観念したように、溜め息を吐くキュウマとヤッファ。

それを見てアルディラも諦めたらしく、肩を竦めて困ったように笑った。



「ユキ、それってどういうことですか?」


今一わからないと言った感じのアティは、俺に説明を求めて質問する。


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