「女王!セシリーア女王!」


月子さんの叫ぶ声と民の声が入り混じる
セシリアはテラスへと出ると砂となった
女神を見る事なく民の前に立つ
民達は女王の姿に静まり返る・・・、
女王の姿を誰もが睨み付けていたのだ


「この国は社会的人権を確保し戦争が無く調和されている
民よ・・・、幸福とはいつも己の隣にいるものなのです
空を見続け手を伸ばしたくなるのも分かりますですが
伸ばし続けても腕が疲れるだけなのです」


セシリアの瞳から零れる滴は誰も気づかない
雲行きが怪しくなる・・・、雷が落ち民達はざわめき始めた
セシリアも空を見て「禁術・・・?」とつぶやくと
急いで魔法陣を描き空へと打ち上げるが荒れる天候は直らない


「セシリーア女王」
「ええ、箱庭にヒビが・・・、」


シュヴァリエの手の甲にセシリアは口づけを落とした
雨が降り始めた、それは何処かで女神が笑っているようで
とても冷たい雨だ・・・、


「私が死してこの世界が保たれるのであれば喜んで身を捧げます
シュヴァリエ、名前の通り貴方はこの国を守り続けてほしいわ
私の愛した騎士様、この世界は少しの不安で崩れる砂の城
今の貴方にもわかるでしょう?貴方に全てを押し付ける結果に
なってしまった事心苦しく思うわ」

「女王、いいえ、セシリーア姫・・・、貴方はもしや・・・、」

「シュヴァリエ、」


シュヴァリエ様がひざまずくとセシリアは口づけをする
王族の印が魔力を通してシュヴァリエ様へと流れる
こうしてシュヴァリエ様が王となりセシリアは姫へと戻る




月子さん率いる女王親衛隊は解散し、部隊長である月子さんも
処刑せよと民は求めたがシュヴァリエ様が月子さんの処刑を拒否した
セシリアは城の塔に閉じ込められ塔事、封印の魔術を使い
処刑の日を待ち続けたが処刑の日は一向に決まらずにいた



「セシリア・・・、」
「貴方は、どうしてここに?」


今まで誰にも見えてなかったのにどうして急に・・・、と思いながらも
一歩一歩とベッドに座るセシリアに近づく
セシリアは「そう・・・、貴方・・・、」とつぶやき微笑んだ


「貴方は、ノスタージャの娘ね、そして私の愛しい妹、今分かったわ
こんなにも私たちに似ているのに、気づかなかったなんて・・・、
やっぱり私は目の前の風景しか見えてなかったのね・・・、」

「セシリア、その黒い影は・・・、」


セシリアの体に渦巻く霧のような影、禍々しい魔力を感じ
これ以上近づけなかった
セシリアの濃い桃色の瞳が逆に不気味に感じる



「これは民の怒りや絶望を纏めた物、いわば呪いというもの
私はこの呪いを受け入れこの呪いと共に死のうと思うわ」
「ダメ・・・、死ぬなんて言わないで・・・、」


セシリアに手を伸ばしセシリアの手を握ると、ピリッと痛みを感じる
これが呪い・・・、とても悲しい気持ちになる・・・、
私が知るセシリアはとても暖かい人だった、こんな過去があるなんて
知らなかった、国の為に、民の為に、身を削り栄光を手に入れた女王は
身を使えるだけ使われ最後には捨てられる
こんな結末があっていいものなのか・・・、なぜ民はより強い幸福を求めたのか


「女神の力をもらわなきゃこの国はここまで栄えなかった
でも、いずれはそれも崩れると知っていた、己の魔力を使ってでも
無理やり栄えさせ続けたが、今や・・・、私の魔力も尽きかけている」

「だから次に魔力が高い、シュヴァリエ様に王権を・・・、」

「この国は常に高い魔力を消費し続けている、民達のために
必要な儀式は、この国に豊かな大地と清らかな水、そして素晴らしい天候
を授け、そして永久の安寧を紡ぐ・・・、」


セシリアはこの塔で今でもその儀式をしている、そしてこの国の
呪いを自身に寄せ付けため込んでいるのだ・・・、
でもそれじゃいつかセシリアは呪いに飲み込まれてしまう・・・、
永遠に光を見る事はなくなる・・・、過去のセシリアでもそれは嫌だった


「セシリア・・・、」
「何故、力無き人間がいつも不幸になるのだろう
何故、力無き人間は報われないのだろう、そう思っていた




「貴方は無力な人の子、汚く愚かで、でも愛しい我が子・・・、」

「アルテミシア・・・様・・・、」


セシリアと私の影から現れた水色の髪の女性は微笑むと
魔法の杖を振りセシリアの体を茨で縛る
セシリアの体から流れる血に反応し赤色の魔法陣が広がる


「セシリア?!」
「うっ・・・、」

「私は人間を愛している、憎たらしい程に、殺したい程に
だから、セシリア、貴方も殺してあげる、でもそうね
簡単に殺すには惜しい器だわ、だから利用してあげる」

「や、め、て・・・!やめて!アルテミシア!」



セシリアの体から現れた緑の瞳の邪神が吠える
闇、絶望、嘆き、憎悪、嫉妬、怒り全てを混ぜ込んだかのような
獣はただ欲望のままに叫ぶ、地面が激しく揺れ床に倒れるが
ただじっと女神を睨むしかできなかった


「セ、セシリア!」


手を蹲るセシリアに伸ばすが、セシリアは「ああっ」と悲鳴を上げると
闇が球体のような形になりセシリアを飲み込んでしまった


「セシリアッ!」
「ノスタージャの娘、貴方が知らない過去をすべて見せてあげるわ」


「アルテミシ・・・ア・・・!」



こんなのひどい、ひどい・・・、酷い・・・、どうして!
涙で視界がぐしゃぐしゃになる、ただ街を燃やす炎と
豪雨、人々の断末魔、これが私が知らなかった歴史の始まりだった



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