「早く民を王城区へ避難させよ!」


シュヴァリエ様の声が高らかに響く民達は悲鳴を
上げ荒れ狂う邪神と炎から逃げまどう
アルテミシアは塔の上で微笑み見ていた
まるで人が死んでいくのを子供が絵本を読んでいる
かのように無邪気に手を叩いて喜んでいた



「・・・、絶望と月の神・・・、ステンノアドール」
「でもそれって聖書の中の話じゃなかった・・・?」


サイさんが日本刀を抜く、シュヴァリエ様とサイさんの前に
は邪神、ステンノアドール、鷲のような翼に
ヘビのような触手、手は獣のような鋭い爪があり目は猫のような
名状し難き神・・・、


「これって、俺たち人間で勝てる物なの・・・?」
「さあな、だが・・・、ここで私が逃げたらこの国どころか世界は
更地になるだろうな・・・、」


シュヴァリエ様はサーベルを魔法陣から引き抜くと邪神を睨む
邪神は魔物を召喚すると、シュヴァリエ様達に近づいてくる
シュヴァリエ様は魔物に刃を突き立てるとサーベルが燃え
魔物は炭へと変わり果てる、サイさんも建物の屋根へと飛び
そのままスピードと重力を生かしてステンノアドールに攻撃を仕掛ける
攻撃と同時に落雷音が響き電磁波が飛ぶ


地獄の業火燃ゆ砲弾



シュヴァリエ様の後ろに巨大な魔法陣が開くと巨大の大砲のように
炎が邪神に向かって発射される
風圧と炎で回りの建物が吹っ飛んでいくと残ったのはえぐれた地面と
無傷のステンノアドールだけ


「一発では物足りんらしい、アルクスを発動する」
「雷鳴・・・、レイ」


空に広がる無数の魔法陣から炎の矢がドールに向かって降り注ぐ
と共に雷鳴がまた響き渡る、これが魔術を組み合わせた物・・・、
ステンノアドールは叫ぶと大きな翼を広げる、翼には目玉がついており
その目玉は急にシュヴァリエ様とサイさんの体へ重力をかけた


「ほう・・・、無理やり力で押しつぶす・・・、気か・・・、」
「地面が・・・、へこんだん・・、です・・・、けど・・・?」


サイさんが地面に膝をつく、両足の骨は悲鳴を上げているだろうか
日本刀を地面に突き刺して耐えている様子だった
シュヴァリエ様はなんとか立てているようだが動けないでいる
これが神と人の差


「私は、神をも殺す力を手に入れた・・・、だがそれでも神は
殺せぬのだ・・・、それが神なのだから・・・、」

「矛盾・・・、してる・・・、ね・・・、」


サイさんのサングラスが割れる、シュヴァリエ様が魔術をつぶやくと
炎が燃え上がり激しく燃える炎がサイさんやシュヴァリエ様
邪神を包み込む、最悪、己の命と引き換えに・・・、
それがシュヴァリエ様の答えだった、サイさんもそれには同意らしく
「ほんと、俺ってやっぱり騎士道に向いてない」と言って地に伏せる

やめて!と叫んでも誰も聞こえておらず空しく響くだけだった


「禁術(タヴーム)解除」


凛とした女性の声が響き渡る、黒馬に乗って走ってきた女性は
まぎれもない、ノスタージャ=アフィリポアだった
紫の魔法陣から黒色の槍が三本召喚され、邪神に向かって飛ぶ
邪神はそれを飛んで避けるが、二本の槍は無数の剣へと分裂し姿を変え
邪神を次々と突き刺していく


「そのまま水底に沈むがいい!」


ひるむ邪神の脳天から黒い巨大の槍が突き刺さる、耳を裂くような断末魔
ノスタージャは魔法陣を描くと本を取り出し開く


「この禁忌の書に貴様の名を書いてやろう、月の邪神、ステンノアドール」


邪神はボロボロの手をノスタージャに向けるが光の粒となり
本の中に吸い込まれていった
アルテミシアは手を叩いて「まさかノスタージャが直々に来るとは」と喜ぶ


「アルテミシア・・・、貴方は本当に残酷な女神ね」
「私は憎悪の女神ですもの、憎悪の神はいつだって子供らを殺したい
ぐらいに愛しているわ」

「狂ってる・・・!」


アルテミシアが指を鳴らすと無数の鎧を着た巨人兵が召喚される
蹂躙、蹂躙、これは戦争だ、女神と人間の・・・、
セシリアがいない今、この国を守る防壁はない、民は嘆いた
誰もが明日には栄光と本当の幸せを手に入れれると思っていた
だが迎えた結末は、この歴史上一番悲惨な殺戮だったのだ



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