向いてゆく道の先


あの後に両親が帰ってきて、玄関まで迎えに行くと大きな手で父さんが頭をわしわしと撫でてくれた。
もう一度自分の事を思い出すために、話を詳しく知りたい、とせがんで話をしてもらった。

わたしは半年ちょっと前に行方不明になったそうで、その時に虹色の羽根を手に握ってフスベシティの外れにうずくまる様に倒れていたのだとか。
いわゆる神隠しに遭遇。
そのせいで、家族の事や自分自身の事。周りの事の殆どを、忘れてしまったのだろうと言う事らしい。


記憶にない父さんと、母さん。そして妹のイズミ。
二週間くらいが過ぎた今も変わらずに、一緒にご飯を食べても、母さんとイズミとお散歩をしても、父さんと父さんのポケモン達のブラッシングをしていても。
どうすればいいのか分からない。
自分ではよく分からないけど、元々口数が多くない私が更に少なくなったせいで、お手伝いさん達はかなり心配しているみたい。
イズミよりも、庭の手入れをしてくれる老夫婦にもよく話しかけて貰える。
同い年の子達は近寄りがたく感じているらしく、お使いに出た時にお喋りする相手は大抵年上のエリートトレーナーの皆さんか、ドラゴン使いの方々なものである。


家族の事などは思い出せないが、夜寝ると必ずと言っていいほど夢を見る。こんなに小さくなる前は、わたしはこんなに小さくなく、お使いの時にお喋りするエリートトレーナーさん達と同い年位の年齢なのだ。
夢の中でもわたしはヤマトという名前で、双子ではなく一人っ子だった。
この世界に存在する前の私自身の生活が夢の中では垂れ流しなので涙が滲んできたが、拭うことが出来ずにいた。







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