真夜中不可侵領域
夢の中の私は凄く楽しそうに同じ歳くらいの女の子達とはしゃいだり、スポーツをしたりしている。
隣に居る子が私に話しかけてくれているのにヤマトと呼ぶ声しか聞こえない。
何を言っているの?と聞き返したくても私の口は思うように動いてはくれず、私の意志とはべつに返答をしている。
自分で発している音さえも拾えなくて、焦ってしまう。
でも何より焦ってしまうのが、大事な人だと何かが頭の片隅で叫んでいるのに、皆の名前も顔も段々と思い出せなくなった事。
きっと、きっとこの夢に出てくる人たちの誰か1人でも思い出すことが出来れば、わたしの中の空白が全部埋まっていく気がするのだ。
確信はないけれど。
次こそは、ちゃんと思い出せなくても近づいてみせるから。
目が覚めると、見慣れた様な見慣れない様な木目の天井が目に入った。
夢から醒める前に、すれ違った友人達と思われる人たちから口々にさようならとか、バイバイ、といわれた事だけは確実に覚えているし、聞こえた事を思い出して涙が滲んできた。
朝食を食べる前までに元に戻ってくれたらいいな。
父さんと今日は珍しく二人でお出かけもするらしいし。