愛多憎生
「よお。具合はどうだ?」
負傷の為、暫く集落に戻って来ているアンバーにセブンが声を掛ける。まだ午前中であるにも関わらず、その手には二本の酒瓶が握られていた。
「ああ。問題ない。」
アンバーはパラッツィに渡された書類を整理しながら、そう答えた。
「やるか?」
セブンは酒瓶の一つをアンバーに手渡す。喉が渇いていたらしい彼は、それを受け取るなりごくごくと一気に飲み干した。
「ところでお前、いつまでこっちにいれるんだ?」
「明後日の正午に発つ。夕方までには戻らないとならないからな。」
「そんならまだ時間あるな!どっか遊び行こうぜ!」
まるで子供の様に瞳を輝かせるセブンを、アンバーは冷淡に横目で蔑視する。
「そんな怖え顔すんなって。それで良くあの我儘娘のボディーガードが勤まってんな、嫌われてんじゃねえの?」
「まあ、そうだろうな。」
アンバーはビオレッタに何度も打たれた行為を、思い返す。
「ところで、エヴシェンとは上手くやってんのか?お前とは合わなそうだけど。」
セブンは仰ぎ向き、酒瓶を空にした。
「ああ、合わねえよ。最悪だ。良く分かったな。」
アンバーは、少し感心した様に視線を向ける。
「しかしいい加減、互いに大人だ。仕事には支障ないから問題ない。」
「それにしたって、いかにせお前は無愛想すぎんだよ。取っ付き難いったらねえや。」
「そんな事を言われても、楽しくもないのに笑えるかよ。」
そう言いながら、彼は困惑した表情で眉を顰めて見せた。
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