観覧注意


「何だ、温和しいな。もう観念したのか?今日は随分と早い。」

そう語り掛けながら、ルーヴィンは自分も淡墨色の法衣を解き始めた。

「『一番最初の時』は果てる直前まで口汚く私を罵っていたじゃないか。みっともない程に、泣き喚きながら。」

「いつの話ししてんだよ、下らねえ。」

吐き捨てる様なその声色は、失笑にも似ていた。

「じっとしといてやるから黙ってさっさとシろよ。今日の僕は、とても機嫌が良いんだ。」

その言葉にルーヴィンは吃驚した様な表情を見せるも、決してその手を止めようとはしなかった。

「お前、サライに似て来たな。」

「知るか。会った事もない父親の性格なんて。」

リュユージュの脳裏に、先程の糸目の男が浮かんで消えた。

「彼奴は、とても合理的で全てに於いて効率最優先の考えを持つ男だ。故に、現実主義者でもあったな。」

ルーヴィンは舌と指で、彼の一部に執拗な愛撫を繰り返す。

「私が国師を襲位した際、サライは何と言ったと思う?」






━━神様なんて、居ないよ?






「ああ…、そうだな。僕もそう思うよ。」

そう呟くと、リュユージュは瞳を閉じた。








忙しなく弾む浅い呼吸と、卑猥な水音が響く空間。

リュユージュはただ時が過ぎるのを待ち、解放されるまで偏にその行為に耐え続けた。






「一つ、覚えておけ。」

着衣と髪型を整え終えたルーヴィンは、扉の前でリュユージュを振り返る。

「手中の全ての権利を駆使すれば、お前の不羈や矜持を奪う事なんか私には簡単なんだよ。それはしないでおいてやるから、感謝するんだな。」

「馬鹿じゃねえの。」

リュユージュは右腕に多少感覚が戻って来た事を確認する。彼は力を入れ、俯せの体をどうにか起こした。

「自由の代償がこれか?だったら安いもんだ、好き使えばいい。僕は、自分を守る必要なんか最初からない『道具』なんだからな。それに━━…、」

その翡翠色の瞳には、侮蔑と遺恨に滾っていた。

「誇りなら、貴方の言う『一番最初の時』に、とっくに捨てた。」

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W.A


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