観覧注意


謁見の最中の動悸や目眩、そして王宮を離れ去った辺りから意識が散漫になりつつあった理由が、漸く判明した。

ルーヴィンが食事中の自分の元に来た際、席を立つ直前に一口の水を飲んだ事を思い出す。リュユージュはバルヒェットとの遣り取りに気を取られていて、手元を見てはいなかったのだ。

「畜生…!あの時、盛ったのか。」

自由を奪われた状態で強く睨み付けるも、脂下がった表情のルーヴィンに文字通り見下されている。

「致し方あるまい。全力で抵抗されたのでは、こちらも腕ずくにならざるを得ないからな。怪我をさせたい訳ではないのでね。」

ルーヴィンはリュユージュの頬に掛かる蜂蜜色の髪に触れた。

そして、軍服の上着に手を掛ける。

「一張羅が汚れてしまってはお前も困るだろう?」

「どんな気遣いだよ。変態野郎が。」

リュユージュは嘲罵の言葉を浴びせるも、衣服を脱がされるその腕には全く力が入らない。態度とは裏腹に、何の抵抗も出来ずにされるがままだった。



それはまるで高級な菓子の包み紙を開ける様な、丁寧な仕草。

先程の乱暴な所業からは想像が難しい程に、ルーヴィンは一つ一つゆっくりと彼のシャツの釦を外して行った。

「暫く見ないうちに随分といい体格になったもんだ。しかし、」

開(ハダ)けたリュユージュの胸元をなぞる指先に、彼の体温と鼓動が伝わる。

「無駄だったな。筋力など、私にはどうにでも出来るんだよ。」

露になった白磁のようなきめの細かい素肌に、ルーヴィンは舌を這わせて行く。

味わうかの様に、じっくりと。

「や、止め…、っ…!」

ルーヴィンの荒い呼吸が、リュユージュの首筋に掛かった。

腕にも足にも力は入らないが、皮膚の感覚が失われた訳ではない。嫌悪から、全身がぞわぞわと震えた。

「何故だろうな。本当に、お前だけだよ。」

リュユージュに跨がるルーヴィンが耳の高さに結っていた髪を解くと、その肩からは輝く絹糸の様な金髪がさらさらと流れ落ちて行く。

「こうも、私の支配欲を掻き立てるのは。」

「黙れ。んっとに気色が悪い。僕に欲情するなんて、頭イカれてんだろ。」

リュユージュはせめて侮蔑の言葉を吐くが、指一本すら自由に動かせない状態では為す術がない。無駄な行動である事は既に承知していた。

「下品な言葉は使うな。その可愛いらしい顔(カンバセ)には似合わないぞ?」

悦に入った様な微笑を浮かべるルーヴィンは、遂にリュユージュのズボンのベルトに手を掛ける。

「私の言う事が聞けない悪い子には、折檻が必要だな。」

喉を鳴らして低く笑う碧眼には、欲望と狂気が宿っていた。

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