実事求是
「あんた、まるで死者を蘇らせる術を知っているみたいだな。」
ドラクールのこの言葉にルーヴィンは低く喉を鳴らした。
そのくぐもった笑い声がドラクールの耳の中に広がり、彼は不快そうに眉を顰めて見せた。
「死者をだと?馬鹿な事を。」
不快には間違いないが、流石にドラクールは多少なりとも慣れてしまっていた。
ベネディクトにしろルーヴィンにしろ、確かに彼らはそれぞれ逸材を持っている。
故に己に向けられる、見下した様なその視線に。
「そんな面倒な事、する筈ない。」
━━面倒?
ドラクールは聞き逃さなかった。
死者への冒涜。
遺族への侮蔑。
これらは彼が最も嫌う行為の一つである。
ドラクールはこれ見よがしに大きな溜息を落とし、何故ルーヴィンが聖職者としての最高峰である国師を務めているのか、また務まっているのかを純粋に疑問に思った。
━━世襲制か何か知らんが、明らかに不適任じゃねェか?こいつ…。
恐らくはドラクールの他は誰一人として違和感は感じていないであろう、この男の本質。
もしかしたらフェンヴェルグ以上に厄介な存在なのかもしれない。
━━いや、そんな事より。
ルーヴィンの分析をするよりも事件解明の方が大事と、ドラクールは初心へ返った。
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W.A