「三回目?何がだ?」
呆けた表情で問うドラクールに対し、それ以上にルーヴィンは気の抜けた顔を見せる。
「だから、女が襲われる事件が、だ。」
━━そうか、そんなにあったんだ。
これまで世間に注して興味もなく何処でどの様な事件が起こっていたかなど、ドラクールが記憶している訳がない。
「しかし、処刑された男が一連の事件の犯人だったんだろう?」
彼はわざと舐める様な視線をルーヴィンに向けた。
「模倣犯でも現れたのか?」
片眉を上げてドラクールは安っぽい挑発を試みる。
当然の如くルーヴィンがそれに乗る様な醜態は晒さなかった。
「…冤罪、」
注意を払っていなければ聞き逃していただろう、ルーヴィンの細い呟き。
「も、可能性としては零ではないが、お前の言うように模倣犯かもな。」
ドラクールは顔を強張らせたまま、変わらずにルーヴィンを凝視していた。
「何故、冤罪ではないとあんたは言い切れるんだ?」
些か疲労感を滲ませ、彼は視界を遮る髪をかき上げて避けた。
「一体誰が『死人に口なし』などと言ったのだろうな?」
ドラクールの視界の中で不敵に笑むその双眼には聖職者としての尊厳も威信も、一切ない。
俗人か、もしくはそれにも満たないかもしれない。
彼は、確信した。
今現在の目前の男は、国師と崇められし孤高の存在などでは決してない。
最早、己以下。
ルーヴィンの瞳は既に盲目に等しい。
━━簡単に落とせそうだな。怒らせさえしなければ。
ドラクールは慎重に次の言葉を探した。
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