此処で漸く、隊長であり議長であるリュユージュが口を開いた。

「今回の一番の問題は、逃亡者への対処法だね。」

その言葉に、彼の隣に座っている隊員が同意を示して頷いた。

「ええ、そうですね。逃げ出したからと言って、斬り捨てる訳にも参りません。拿捕と送還を前提としてるのか、是非ともその辺りを明瞭にして頂きたいです。ボルフガング副隊長、如何でしょうか?」

「逃亡者の扱い方だと?そんな話し、親父からは何も聞いてないが。」

「もしかして君、全てをそれで済ませるつもり?」

リュユージュは机の上の足を組み換えた。

するとそれを見たボルフガングは机を両手で力一杯に叩いて立ち上がり、リュユージュを指差した。

隊員達は驚いて顔を上げる。

「お前、さっきからその態度は何なんだよ!!俺に喧嘩売ってんのか!?」

「君は僕が欲しい情報を理解してる?理解出来ていないなら紙に書いてあげるから、父上に聞いて来てくれるかな?」

「貴様…!!馬鹿にしてんのか!?」

ボルフガングは青筋を立てながら、リュユージュに詰め寄った。

同時にリュユージュは厳めしく翡翠色の瞳をボルフガングに向けると、その碧玉色の瞳を捉えた。

「僕は君に喧嘩を売ってなんかいないよ。任務遂行にあたって必要な情報を揃えるようにと、部下である君に命令しているだけだ。」

「ふざけんな!!調子に乗りやがって!!」

「言っておくけど、先に喧嘩を売ったのは君の方だよ。ボルフガング。」

「はあ?そりゃ一体何の話しだ。ああ、留年したお前をからかった事か?」

「違う。」

リュユージュは蜂蜜色の癖毛を揺らし、首を横に振った。

「まあ、そんな事は今はいいから、早く『第二隊副隊長』としての仕事をしてくれないかな。出来ないのなら、今直ぐ出て行け。邪魔だ。」

元々が忍耐などとは無縁のボルフガングは、書類を机に叩き付けると力一杯に椅子を蹴り倒し、会議室を出て行った。

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