リュユージュは蹴躓きながら部屋に駆け込むと、箪笥をひっくり返した。
━━ど、どうしよう。何を着て行こう。
寵姫達に良く似合うと言われていたものはどれであったかと記憶を辿りながら、手持ちの服を必死に漁った。
━━いや、それより髪の毛どうにかしなきゃ。畜生、こんな事なら散髪しときゃ良かった!
叩き付ける様に服を放ると、今度は洗面所へと走る。
つい先頃、婚礼式や卒業式があるからと周りから強く理髪を勧められたが、彼は面倒がってそれを拒んだのだ。
伸ばし放題の癖毛はとっくに肩に届いており、いくら梳いても思い通りにはならなかった。
「お待たせ致しました。」
「いいえ、大丈夫よ。」
ベネディクトはリュユージュが身支度の途中で淹れた珈琲を、ちょうど飲み干したところだった。
「行きましょう。」
居室を出て廊下を進むベネディクトの後ろにリュユージュは付き従う。彼は無意識の内に、その姿を舐める様に見ていた。
歩を運ぶ度に彼女の背中で揺れ動く金色の髪は、まるで精練された極上の絹糸の様だった。
そして鍛え抜かれたその身体に無駄な肉は一切無く、しかしそれでいてふくよかな女性的な輪郭線は失われてはいない。
━━僕は変態か…。
ベネディクトの尻を凝視している自分に、リュユージュは漸く気が付いた。
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