『暗黒街』と言う不名誉な異称が付けられた街、デイ・ルイス。

今となっては、その名称は大半に忘れ去られていると言っても過言ではない。

端から見たらそんなしがない街かもしれないが、それでもこの街を愛し、守ろうとしている者達がいる。彼等は懸命に力を尽くしていた。



「キリがねえぜ!」

筋骨隆々とした浅黒い肌の傭兵の男は、斧の様な頑丈な刃を持つ剣を振るう。

「援軍が来るまで持ち堪えるしかない!」

一方、紺色の自警団の制服の男はレイピアに似た剣を手に戦っている。

「だいたい、援軍って誰なんだよ!?」

「危ない!」

自警団の男は、傭兵の男を背後から斬り付けて来た敵兵を突いた。鎧の僅かな隙間を正確に狙い、細い刃はその喉元を貫いた。

「おっと、悪い!」

「援軍は…、」

言いかけて、自警団の男は自分も詳しくは知らない事に気が付く。



その時、雷鳴にも似た地響きが徐々に近付いて来た。

「あれは!?」

それが多数の軍馬の蹄鉄の轟きと知ると、味方も敵方もその方向を見据えた。

逸早く、旗幟を目にした傭兵の男が大声で叫ぶ。

「十字軍だ!!援軍だーっ!!」

同時に、バレンティナ軍の兵士も叫んだ。

「『死神』だ!!『白の死神』が現れ出たぞ!!」



山路を駆け下りて来た軍勢は裾野に到着するとリュユージュの命令を受けて左右に広がり、街全体を覆い尽くす様に取り囲んだ。

「すげえ…!何て数だ!」

瞬く間にルード隊はバレンティナ軍を包囲した。

「俺達は邪魔になる!」

呆気に取られていた傭兵の男は、自警団の男の声を聞いて退こうと向きを変えた。

振り返った彼が見た物は、目を疑いたくなる程の巨大な火砲だった。

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