リュユージュ以下約三百名から成るルード隊は、面影の欠片もないバースに到着した。

沈もうとしている太陽が、惨劇の爪痕を照らし出している。

殆どの建物は焼け崩れ、至る所で未だに火は燻り、炭と化した死体は幾重にも積み重なっていた。

国民が営んでいた日常を想像するのも難しくなってしまった目前の光景に、隊員達は暫し言葉を奪われていた。



「十五分、休憩。」

「は!」

リュユージュの命令をレオンハルトは旗手に指示する。旗手達は旗を振り上げ、それを総員に伝令した。

レオンハルトが地図を広げると同時に、各隊の隊長と副隊長が集まって来た。

「将軍より、戦闘行動を『駆逐』から『殲滅』に変更せよとの命令だ。まあ、僕が居る時点でみんな分かっているとは思うけどね。」

リュユージュはレオンハルトも含め、各隊の隊長や副隊長を舐める様にぐるりと見渡した。

「まず、第二十隊から二十五隊は国民の救出。以下は補佐。」

ベネディクトの命令により『負傷者』が除かれた。この場合の『負傷者』とは、敵軍のそれを指していた。

「第二隊は特命だ。河港の閉鎖及び、敵軍を迎撃。レオン、指揮は君が取れ。」

「は!」

副隊長であるレオンハルトが第二隊を任された。

「第十六隊から第十九隊は、敵軍の進路退路を共に徹底的に封鎖しろ。」

リュユージュは地図を指差しながら封鎖箇所をそれぞれに指示した。

「第十隊から第十五隊は遊撃隊として、策戦は各隊長に一任する。攪乱でも援護でも突撃でも、何でも構わない。」

戦況に応じて攻撃に転じるか援護に転じるか、それさえも各々の隊長の判断に任せた。

更にリュユージュは自分の隊である第二隊の指揮をレオンハルトに任せ、自分はどうするのか一切触れなかった。

だが、その事を言及する者は誰もいなかった。



『死神』の出陣は、策戦に関係無く全ての生命の息吹を消し去る事を意味しているに他ならないのだ。

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