聖王専属の警備兵が三人の入室を知らせる為、扉を軽く叩く。
内側から扉を開けたのは、ルーヴィンだった。
彼を筆頭に、四人は聖王の御前に跪く。するとその頭上に低く威圧的な声が降り注いだ。
「粗方の状況は理解した。我が彼や是やと指示する必要もあるまい。ベネディクト、己(ウヌ)に一存す。」
「御意。」
フェンヴェルグは今回の事態を重く捉えてはいない様だ。
ルーヴィンも同じ見解だが、ドラクールの”予言”が彼の頭からどうしても離れなかった。
「待て。残りなさい。」
二人と共に下がろうとしたベネディクトに対し、ルーヴィンは留まる様に指図をした。
踵を返そうとした彼女を、今度はリュユージュが引き止める。
「全軍、進軍準備は既に完了しております。早急に進軍許可を。」
「分かったわ。直ぐに行きます。」
リュユージュはルーヴィンを睨む様に凝視したが、彼は意に介する事もなく関心を示そうとさえしなかった。
ドラクールの”予言”を聞かされたベネディクトは、知りながら尚それを軽視しているフェンヴェルグやルーヴィンに対して異議を唱えた。
だが、彼等の判断は変わらなかった。
「聖王は、私に判断をお任せ下さると仰いました。私は私の、最善を尽くします。」
「構わぬ。好きにするが良い。」
彼女は王宮を後にすると、軍営へと急いだ。
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