ベネディクトはアンジェリカを振り返ると、声を掛けた。

「御免なさい。もう暫く、此処で待っていて頂戴ね。貴方達、縄を解いて。」

「ですが…。」

警備兵は不安と不満の入り交じった表情を見せる。

「彼女は罪人ではないわ。」

「ですが、バレンティナ人ですよ?それも兵役経験のある。解放する事は善処ではないかと…。」

もう一人の警備兵が反論を試みるが、ベネディクトに一蹴された。

「リュユージュが伝達に寄越したのよ、彼女を。信頼して、ね。」

その一言を受けて、警備兵はアンジェリカを解放した。






ベネディクトが詰所を去ったのを確認すると、二人の警備兵はアンジェリカを壁際へと追い立てた。

彼等には帯剣は許されていないらしく、代わりに警棒を振り翳して威嚇した。

「おとなしくしてろよ。」

「おとなしくも何も、騒ぐ気なんかないわ。」

アンジェリカは侮蔑を込めた瞳で警備兵を見据えた。

「私、反女王派なの。だって性別で優劣が決まるなんて、おかしな話しじゃない?」

警備兵達は顔を見合わせた。

「でもあなた達を見てると、男性を排除した女王もあながち間違いじゃないのかもしれないわね。」

「な、何だと!?」

「止めておけ、下らない。」

怒声を上げた警備兵を、もう一人が宥めた。

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