「バレンティナ軍による、バースへの攻撃開始時刻は午前零時頃。到着経路は海路からの河港だと思われます。僕の見解で、騎兵は五十から六十、歩兵はその倍。攻撃目的及び目標は不明。現在は敵将死亡により、壊乱状態に在るものと予想しています。」

リュユージュは極めて簡潔な報告をする。

「そう。有り難う。」

何故ならベネディクトにはそれで充分だからだ。

「貴方は直ぐに怪我の処置を。」

下がろうとしたリュユージュの横を、白い甲冑姿の一人の男が駆け抜けて行った。

「ベネディクト将軍殿、第二隊副隊長レオンハルトよりご報告申し上げます!バースへの進軍、及び隊長脱出援護、準備完了致しました!進軍許可をお願い致します!」

「レオン。君、慌て過ぎ。」

リュユージュは顔を上げ、その男に声を掛けた。

「…た、隊長…!?」

「うん。」

「リュユージュ隊長ーっ!!」

「うん、僕だよ。何。」

ベネディクトは首を少し傾け、困った様に微笑した。

「御免なさいね、レオンハルト。最速で準備を、と、急かしたのに。」

「いえ!ご無事で何よりです、リュユージュ隊長!」

「うん。」

「いや、無事じゃないじゃないですか!お怪我をされているではないですか!」

「うん。」

「早く軍医殿の所へ行きましょう!」

「そうなさい。」

レオンハルトはベネディクトに敬礼をすると、リュユージュをまるで引き摺るかの様に連れて行った。

ルーヴィンは些か呆れた様な表情だったが、ベネディクトは穏やかな瞳で二人を見送った。



「私はリュユージュの処置が済み次第、聖王に報告して来るわ。」

「分かった。」

「私の代わりにお願いね。朝食。」

「ああ、すっかり忘れていた。」

ルーヴィンは詰所からドラクールの元へと向かうべく、退室して行った。

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