「禁断の恋、って訳か。」
「そんな綺麗なモンじゃねえけどな。」
ギルバートは俯き、赤毛を揺らして首を横に振る。
「俺の罪は窃盗なんかじゃない。恩人に報いず、仇で返しちまった事さ。」
「それで、どうして僕にそんな話しを?懺悔なら聖堂に行った方がいい。」
「ただ、聞いてもらいたかっただけだ。隊長さんにとっては迷惑なだけだろうけどな。」
「特に迷惑だとも思わないけれど、だからと言って何かを感じる訳でもないよ。」
「同情して欲しいんでもねえって。」
ギルバートは苦笑を漏らした。
「そういや懺悔って言えば、刑務所にルーヴィン国師が慰問に御来駕された事があったんだ。」
リュユージュは表情こそ崩さないが、僅かに心が乱された。だがギルバートにはそれを読み取る事が出来ず、話しを続けた。
「俺は遠巻きに一目見ただけだが、やっぱ半端ねえな。雰囲気っつーか威圧感っつーか。厳かで尊い真っ白な威光に包まれていて、本当に眩しかった。」
━━首都を離れてまで、その名前を聞きたくない…!
リュユージュは不機嫌そうな態度でベッドから立ち上がり、部屋を出ようと扉に手を掛けた。
「君は少し休んだ方がいい。」
「え?あ、ああ。」
突然の展開にギルバートは戸惑いながら聞く。
「どっか行くのか?」
「すぐ戻る。君はここを動くな。」
扉が乱暴に閉められた為、立て掛けてあった彼の剣が倒れてしまった。
リュユージュは行き交う人々の間をすり抜け、街を彷徨い歩いた。
ふと、地下に繋がる階段が目に入った。
アングラと言う単語が示す様に、初めて来た土地では好んで入るべき場所ではない。
だが、リュユージュは自分が丸腰である事も忘れ、その階段を下って行った。
-115-
[←] | [→]
しおりを挟む
目次 表紙
W.A