せめて代わりに
その日は何となくで、そのコと一緒に帰った。
お互いの中学の話しとか部活の話しとか。
駅までの道のりが、ちょっとだけ苦痛だった。
けどひとりでいたら、またイヤな顔をしながら過ごす事になる。
「じゃあね、また明日!」
家は反対方向のため改札をくぐった所でバイバイした。
ホッとため息をつき、ホームに行く。
向かい側のホームを見ると、彼女が大きく両手を振っていた。
あたしはまた営業スマイルで軽く手を振り返し、滑り込んで来た電車に乗る。
ドアのガラスに映る、自分の顔。
こないだ開けたばっかりの両耳のピアスが光る。
何故か右だけ、膿んでいた。
あたしの、心みたい。
じゅくじゅくに膿んで、もっと痛くなればいい。
もっともっと、血と膿を吐き出せばいい。
心のそれは、決して吐き出てはならないものだから。
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