あしらいつつ 



入学式を過ぎ、クラスにも少しだけ馴染んだ頃。

暇さえあれば、瑠乃の事と彼の事を考えているあたし。



その時の自分がどれだけイヤな顔してるかなんて、鏡見なくたって分かる。






「藤堂さんて彼氏いるでしょ?」

「え?」

隣の席になったコに、ふいに話しかけられた。名前、なんだっけ。

「いないよ?」

露骨な、営業スマイル。

「あれっ、そうなの?おかしいな、外れた〜。」

明るく笑う彼女につられた風に、あたしも無理に笑ってみた。



「『恋する乙女』な目してたんだけどな〜!」

当たってるよ、それ。

「ねねね。ってかさ、ウチのクラス意外とレベル高いよね。」

こそっと耳打ちする彼女。

「安西君とか、カッコ良くない?」



あたしにはクラスの男子は全く写っていなかった。



「あ、うん。そうだね。」

その『安西君』が誰かも、実は知らないけど。

「だよね!」

無難な返事をしておけば、万事オーライ。

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