あたしの裏切り
『でね、パソコンのアドレスだったんだ。携帯は持ってないんだって。』
あたしはこの電話に出た事に今、心底後悔している。
『嘘くさくない?今時、携帯持ってないなんてさ。』
「あたしも持ってないけど。」
瑠乃に対して、これまでなかったぐらい無愛想に答えた。
『え?違くてさ、中学生の雪と社会人の甲賀さんじゃ』「ゴメン、あたし洗濯の途中だから。」
一方的に切ろうとしたが、待って待って!と引き止められる。
『高校入ったら携帯買ってもらえるんでしょ?そしたらすぐ教えてね。』
「うん、分かった。」
あたしは左手で新品の携帯をいじくりながら、右手で家の電話の受話器を置いた。
あたしが大切にしたいものって、一体なんだろう?
既に出ている答えに気が付かないフリをしていた、高校の入学式の前日。
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