逆恨み 



「何?」

あたしの視線に気付いた彼が、瑠乃の向こうから見ている。

ばっちり目が合ったあたしは多分この時、真っ赤になっていたと思う。



ぶつかり合ったその視線を瑠乃が遮る。

「甲賀さんていくつなんですか?」

「ん?21。」

「車とかって持ってます?」

「今はないよ。この辺、便利だし。」

「お仕事、翻訳家って聞いたんですけど〜。」

「うん。たまに英会話教室のバイトもやってる。」



ガンガン彼に降る質問と、サラっと答える内容に聞き耳を立てていた。



「彼女とかって…います、か?」

ちょっと言い淀んだ、瑠乃。

更に耳をすます、あたし。



「いないよ。」



彼の顔を見る事なんか出来なかったが恐らく深く捉えず、これまで同様サラっと答えてたと思う。

「じゃあ、アド教えて下さ〜い!」

「『じゃあ』の意味が良く分かりませんが。」

苦笑いしながら、彼はあっさりアドレスを教えた。



積極的にアプローチしてる瑠乃。

そして恋人ナシの彼。

どちらも悪くなんかないが、あたしはふたりを憎んでしまいそうになった。

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