大事なのは 



「昨日びっくりしたよ。お父さんだったんだね。」

「うん。」

あたしは瑠乃の隣に座り、自分の膝をじっと見つめている。

「あ、子猫だ。」

瑠乃はベンチを立ち、あたし達の間には不自然な空間が生まれた。



「この前一緒にいたのって友達?」

「え?友達って瑠乃でしょ?」

あたしは、ブランコの側で子猫を眺めている瑠乃に視線を向けた。

「違うよ、男の子。」

「あ、一臣くんか。うん、幼なじみ。」

「へぇ。」



「この猫達、甲賀さんが飼ってるんですか?」

瑠乃は戻って来て、今いた場所に腰をおろした。

「全然。何となくエサやってるだけ。」

「そうなんですか、みんな可愛いね。」

瑠乃と他愛ない会話をしている彼の顔を、そっと盗み見た。

カッコ良いとか悪いとか、あたしにはやっぱり良く分からない。



前髪がかかってる、切れ長な目。

その隙間からは形のいい鼻が覗いている。

長い前髪の終点はちょうど、綺麗な唇の辺り。






つい昨日まで名前も知らなかったし、年は今でも知らない。

それでも、あたしは思う。

彼が 好き だと。

-33-

[] | []

目次 表紙
W.A
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -