大事なのは
「昨日びっくりしたよ。お父さんだったんだね。」
「うん。」
あたしは瑠乃の隣に座り、自分の膝をじっと見つめている。
「あ、子猫だ。」
瑠乃はベンチを立ち、あたし達の間には不自然な空間が生まれた。
「この前一緒にいたのって友達?」
「え?友達って瑠乃でしょ?」
あたしは、ブランコの側で子猫を眺めている瑠乃に視線を向けた。
「違うよ、男の子。」
「あ、一臣くんか。うん、幼なじみ。」
「へぇ。」
「この猫達、甲賀さんが飼ってるんですか?」
瑠乃は戻って来て、今いた場所に腰をおろした。
「全然。何となくエサやってるだけ。」
「そうなんですか、みんな可愛いね。」
瑠乃と他愛ない会話をしている彼の顔を、そっと盗み見た。
カッコ良いとか悪いとか、あたしにはやっぱり良く分からない。
前髪がかかってる、切れ長な目。
その隙間からは形のいい鼻が覗いている。
長い前髪の終点はちょうど、綺麗な唇の辺り。
つい昨日まで名前も知らなかったし、年は今でも知らない。
それでも、あたしは思う。
彼が 好き だと。
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