漂う、独特の空気
「ん?いつも公園にいるから、なんとなく挨拶を交わすようになってな。」
父が出勤する時間にほとんど毎朝、彼は公園にいて猫と戯れてるらしかった。
普段からそんなにしょっちゅう公園にいるんだ。
「あの人って学生なんですか?働いてる人?」
「翻訳家だって。」
意外にも、父が1番『段ボールの人』の事を知っていた。
「いくつの人?」
「年までは知らないな。見た感じ、20代前半から半ばじゃないか?」
ふ〜ん…。
「カッコ良いよね!?」
瑠乃はあたしに同意を求めるが、父の手前もありあたしは「分かんない」と答えておいた。
「考えてみたらお父さん、甲賀さんの顔って良く見た事ないかもな。雰囲気ですぐ『あぁ、甲賀さんだ』って分かるから。」
「あ〜、あたしも!」
そうだ。そんな感じ。
確かな存在感があるからいちいち顔見て確認しなくたって、平気なんだ。
もっとも伸ばしっぱなしの髪が邪魔で、表情を読み取りにくいというのもあるけれど。
瑠乃は理解出来ないようで、不思議そうな顔をしていた。
-30- [←] | [→]
目次 表紙
W.A×