知ってるけど知らない人 



11時を過ぎても、瑠乃は戻って来ない。携帯にも出ない。

あたしは枕を抱き、待っていた。



ガチャ



玄関のドアが開けられた音に、あたしは部屋を飛び出した。

「なんだ、お父さん。」

「なんだとは何だ。せっかく寿司とってやったのに。」

「違うの、瑠乃がコンビニからまだ帰って来ないの!」

父の顔色が変わり、今脱いだコートをもう1度羽織る。

「コンビニってそこの通りのだよな!?」

あたしが頷くと同時に、父は家を飛び出して行った。






それから10分もしないで瑠乃は父と帰って来た。

「ダメだろ、瑠乃ちゃん。おじさんも雪も心配したんだからな。」

「はい、ゴメンなさい…。」

シュンとしている瑠乃をよそに、父は安心したように言った。

「大丈夫だったよ。瑠乃ちゃん、甲賀さんといたよ。」

「甲賀さん…?」



あたしは首を傾げる。



「あれ、あの人お前の事知ってたぞ?一緒に猫にエサやったりしてるって。高校合格おめでとうって伝えてって言ってた。」

『段ボールの人』の名前が『甲賀さん』って言う事を、この時初めて知った。

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