フタをして閉じ込めて
「ねぇ、雪。前にさ、荷物持ってくれた男の人いたじゃん。」
あたしの布団を敷いている手が一瞬、止まった。
「うん、何?」
どうか気が付かれないように、と。
「あれから会ってない?」
「ううん、たまにコンビニで会うよ。」
親友に嘘をつく心苦しさよりも、この感情を隠すのに必死だった。
「そうなんだ、いいな〜。何かしゃべったりする?」
「え?立ち話しぐらいは…。」
待って?
『いいな』って、何?
「へぇ〜!仲良くなった系?」
「え、いや。別にご近所さんだし。」
仲良くなんてなれてない。
まだ名前も知らないのに…、ね。
「あんなカッコ良い人が彼氏だったら超自慢じゃない!?」
瑠乃に対してもあの人に対しても溢れそうになったこの感情を、さっきよりも必死になって隠した。
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