下町情緒
自宅に帰りだいぶ落ち着いた頃、瑠乃から電話が来た。
「うん、分かった。待ってるね。」
「姉ちゃん、まだのんびりしてんの?夕飯まだ?」
弟の海が電話を切ったあたしに声をかける。
「今から瑠乃来るから。そしたら出るよ。」
「は?今から買い物!?」
今の時間は6時半。だいたいウチの夕飯は7時前後のため、普段ならあたしが台所で忙しくしている時間帯だ。
「だってお姉ちゃん、今日卒業式だったんだよ?」
「知らねーよ。米ぐらい炊いてあんのか?…ってねーし!」
海は空っぽの炊飯器を見て、愕然としている。
「おい。夕飯あるよな?」
「さぁね〜。」
「さぁねじゃねーよ、腹減った!」
ピンポーン
「あ、瑠乃だ。」
玄関先にでっかいバッグを置いた瑠乃と、ふたりで商店街へと歩き出す。
「海、何か叫んでなかった?」
「夕飯ないと思ってるみたい。」
「アハハ、じゃああたしら帰ったらビビるね!」
行き先は馴染みのお寿司屋さん。
お父さんが特上6人前を予約しておいてくれたのだ。
「ありがとうね、雪ちゃん、瑠乃ちゃん。今日は配達が多くてね、助かったわ。」
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W.A×