未だ、幼く
「ユキ!!」
瞬間、心臓を鷲掴みにされたんじゃないかって思った。
「待てよ、ユキ!!」
公園の柵を軽がる飛び越えてあたしに一直線。
「返せよ、シャーペン!約束だろ!?」
息を弾ませている目の前の、彼が言った言葉。
もうとてもじゃないが言い表せる心中ではない。
あたしは無言でカバンから取り出し、無言で手渡した。
途端、視界が滲んだ。
大粒の涙がコンクリートに落ちる。
「受かったんだろ?嬉し泣きか?」
相変わらずのジャージに、相変わらずのポケ手。
「バカーっ!!」
あたしは捨て台詞を残してダッシュで逃げた。
「ちょっ…、置いてくなよな。」
一臣くんと一緒だった事も忘れて。
止まらない涙と全力疾走のおかげで、息が出来ないぐらい苦しい。
それだけじゃない。
あの人の顔を見てしまったから。
苦しい…。
苦しいよ…。
これが報われない恋の痛みなの…!?
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