知らずにいるより
「な、泣くなよ!何、マジで!?」
校門を出て、ほんの数歩進んだだけの距離。
案の定すぐ一臣くんの友達に発見され、冷やかされた。
「カズと離れたくないってか〜?藤堂〜!」
「いつの間にそんな関係になってたんスか、おふたりさ〜ん!」
「うっせーよ!そんなんじゃねー!!」
一臣くんはシッシッって、友達を振り払った。
「気にするなよ、行こう。」
優しく、後に続く様にあたしに指示する。
「カズ、幸せにしてやれよ〜!浮気すんなよ〜!!」
「てーか藤堂!ウチの一臣をヨロシクね〜。」
「ッせーってんだよ!!」
校門に向かって怒鳴る一臣くん。
ちょっと可笑しかった。
学校とあたし達の家のちょうど中間ぐらいにある公園に行き、ベンチに並んで座る。
少し、距離はとって。
「せっかく高校も受かったんだし…あんま気にするなよ。なっ!?」
明るく振る舞おうとする彼と、地の底に落ちたようなあたし。
対照的なふたりの間には長い沈黙があった。
「あたし、一臣くんに言われて初めて分かった。」
あたしはそれを破る。
「コレって失恋なんだ…。あたし、あの人が好きだったんだ…。」
勇気を出して、認めた。
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