猛り、そして駆られても
「で、何やってんだよ。中学生がこんな時間に。」
「牛乳、買いに行っただけ。」
「そんな緊急の用事も珍しいね。」
「そう?」
もうすぐ、あたしの家に着く。
…。
イヤ、だな。
何か、帰りたくない。
「どうした?」
あたしの体は素直に心を表現していて、歩くのを止めていた。
「帰りたく、ない。」
絞り出す様な声だけど精一杯、伝える努力はした。
「いいよ。」
彼はあっさり、あたしを肯定する。
その反応に逆に驚き、顔を上げた。
「じゃ、お兄さんトコ来る?」
「え。だって…でも。」
「あの雑誌のとおんなじ事、してやろうか?」
牛乳も財布もあたしの手から離れ、地面に落ちた。
そんなあたしを見て、お腹を抱えて笑う『段ボールの人』。
彼の笑い声は、深夜の路地にこだましていた。
「ウっソ、ウソ!冗談だよ。」
彼は牛乳と財布を拾ってくれた。
それをおずおずと受け取るあたし。
「破壊衝動は誰にでもある。それをしないユキちゃんは上等だ。」
彼は毎回背を向けてから、あたしに手を振る。
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