見た事はあるはず 



「ところで雪はどうだったの?」

「うん。一応、公立受けてみる。確率は半々ってさっき言われちゃった。」

「滑り止めは?」

一臣くんが不安そうに聞く。あたしは、首を横に振った。

「弟達の事もあるし。仕方ないよ、どうしてもやりたい勉強やなりたい職種があるんでもないしね。」

「そっか…。」

一臣くんも瑠乃も、それ以上は何も言わなかった。



「あ、ゴメン。俺そろそろ行かなきゃ。」

一臣くんの三者面談は午後からで、それまであたしに勉強を教えてくれていたのだ。

彼は後ろを向き、メガネを外して袖口で拭いている。

「稲葉君、こっち向いてよ。メガネ取るとどんなんな訳!?」

瑠乃が教科書の上に乗り出し、一臣くんの肩を叩く。

「何だよ、止めろよ。別に変わんないって!」

しかし彼は、もう既にメガネをかけていた。

「ケチ。いいじゃん、見せてくれたって。」

「見てどうすんだよ!」

さっさと、図書室を出て行ってしまった。



「意外とカッコ良かったりして?」

瑠乃は荷物をまとめるあたしに聞くが、いまいち思い出せない。

一臣くんの、素顔。

「幼稚園の時からメガネなんだよね。どうだったっけかな。」

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