絶叫、自己紹介
「な、泣いてなんかないもん!」
ちょっとウルウルしてただけだもん。
「あっそ、俺にはそう見えたけどね。」
泣かないよ。
あたしそんなに、弱くない。
ノドを鳴らしながら絡み付く猫の相手をしながら、こう言った。
「自分ひとりでこらえなきゃなんねー時もあれば、そうじゃない時もあるだろ。」
「え?」
「ま、話してみたら?」
「えっと、別にそんな大した事じゃなくて。」
「恋の悩みか。」
あたしは声を張り上げる。
「受験受験ってなってるこの時期に、恋なんかしてる余裕ありませんッ!」
「ああ、受験か。大変だね。」
「うん。」
「落ちてから考えりゃいいんじゃねーの?そんなの。」
「え?」
「長い人生、1年2年低迷する事もある。どって事ないよ。」
「…。」
そんな風に言われた事も考えた事も、ない。
「結果より過程を大事にしなさい。そういう意味での、後悔はしないようにね。」
「じゃ。」と、彼は猫達を引き連れ肩越しに手を振った。
「あ。ま、待って!」
その背中に向かって叫ぶ。
「あたし、雪!藤堂 雪〜!!」
彼は振り向かず、空に向かってこう言った。
「俺は『段ボールの人』!」
名前教えてよ、もうッ。
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