心強い存在 



「だからね、水素の原子記号が…。」

「え。待って待って、一臣くん!もっかい最初から〜!」

「あぁ〜もう、雪は!」



あたしは今、図書室で幼なじみの一臣くんに科学を教えてもらっている。



「なんで、全然分かんないよ〜。」

「基礎が分かってないんだろ。数学は平気なの?理数系全般、弱くなかったったけ?」

「…。」

「待て。国語も英語も社会も弱いよな?」

「……。」



一臣くんは大きなため息をついた。



「勉強する時間がないってのも分かるけどさ。家の事、大変だろうからね。

でも今は大事な時期だろ?やれるだけやってみなよ。協力してもらってさ、家族にも。

俺もするし?」



落ち込んでいるあたしの顔を、そっと覗き込む。

一臣くんは幼稚園の頃から、いつだって優しかった。

あたしがお母さんを亡くした時も、1番支えになってくれたと思う。






「お前ら、まだいたのか?」

図書委員の先生が、ガラっと勢いよくドアを開けた。

「もう鍵かけるぞ。」

「は〜い、すいません。今帰ります。」

あたし達は慌てて教科書やノートをカバンにしまった。

-7-

[] | []

目次 表紙
W.A
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -