心強い存在
「だからね、水素の原子記号が…。」
「え。待って待って、一臣くん!もっかい最初から〜!」
「あぁ〜もう、雪は!」
あたしは今、図書室で幼なじみの一臣くんに科学を教えてもらっている。
「なんで、全然分かんないよ〜。」
「基礎が分かってないんだろ。数学は平気なの?理数系全般、弱くなかったったけ?」
「…。」
「待て。国語も英語も社会も弱いよな?」
「……。」
一臣くんは大きなため息をついた。
「勉強する時間がないってのも分かるけどさ。家の事、大変だろうからね。
でも今は大事な時期だろ?やれるだけやってみなよ。協力してもらってさ、家族にも。
俺もするし?」
落ち込んでいるあたしの顔を、そっと覗き込む。
一臣くんは幼稚園の頃から、いつだって優しかった。
あたしがお母さんを亡くした時も、1番支えになってくれたと思う。
「お前ら、まだいたのか?」
図書委員の先生が、ガラっと勢いよくドアを開けた。
「もう鍵かけるぞ。」
「は〜い、すいません。今帰ります。」
あたし達は慌てて教科書やノートをカバンにしまった。
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