東京都内にある高い塀に囲まれた自宅に辿り着くと、ちょうど門の前にとまっていた黒塗りのベンツから男が降りるところだった。

スラッとした紺のイタリアスーツを着こなす、黒目黒髪の冷厳な雰囲気の男だった。
ベンツのドアを他の者が開けて待っているのを当然のように受け入れて男はカツリと硬質な音を響かせて地面に降り立った。

そしてチラッとバイクに乗ったまま見てくる黒琥に目を向けるものの、言葉をかけることはなく無視して、男は月宮組の門をくぐっていった。
彼の後ろには当然のように部下たちが何人も続いてゆく。

その男の後ろ姿を黒琥は苦虫を噛み潰したかのように見送る…否、自分の腹違いの兄を見送った。

そしてそれに間を置かずに月宮家玄関から一人の男が石畳を歩いてこちらに向かってきた。
がっしりとした体つき、強面で長身の男だった。
男が来ているのは仕立ての良いスーツだが堅気にはとても見えない、左手の小指もない。男は低い声で黒琥を「坊」と呼んだ。

「朝帰りとは珍しいですね、風呂も食事も用意させてあります。」

嫌味なほど出来るこの男は、黒琥の片腕として組長である親父がつけてくれた。
黒田英滋という…黒琥がまだ小学生の頃だ。
それ以来、忙しい親父や兄より、よほど近く黒琥の世話をしてくれている。
黒琥はニィッと笑うとヘルメットを彼に押し付け、ひと眠りする、そう言うつもりだった。

のに、

ピコーーーンッと絶望な機械音がした。
そしてモヤモヤっと頭上に選択肢が浮かぶ。


▼お風呂♪
▼ごはん♪
▼それとも私♪


意味が分からないっ!選択肢つくってる奴は馬鹿だろ!!
俺はふたたび高速で脳内を動かした。
今回の選択肢は馬鹿臭あふれているが、まだキスとか無いから良い!!

今回は、これだっ!


▼お風呂♪


考えてみれば、白鷲が体を清めてくれたとはいえ、風呂入れてねぇしな。
後ろで俺に追いついた蝙蝠が「風呂キタコレw」と言ってるのに嫌な予感がしないでもないが無視して、風呂に入ることになった。





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