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酷い夢を見た気がする。
あれは夢だ、その証拠になんだか今はふわふわする。
ほら夢だ。
視界も白い…そんな中で声が聞こえた。
「…っい」
なんだ?うるせぇな寝させろ…
「おい起きろ、黒琥」
ハッとして目を開け、瞬間的に体を起こそうとしたら、なぜか下腹部に激痛が走った。
「くっつぅっ」
痛みで呻いて、ふわふわの白いベッドに埋もれる…とそこでハタと気付いた。
(此処はどこですか?)
苦痛に眉を寄せた顔で先程の声をした方を見ると、上半身裸で腰にゆるくバスタオルだけ巻いた白鷺がいた。
視界を巡らせると此処はどうやらマンションの一室らしかった。
色々…思うところはあるが。
だがしかし俺を絶望の淵に落としたのは事後の雰囲気を出している白鷺じゃない。
…俺の悪夢の象徴である蝙蝠が…湯気を出しながら白鷺の頭に止まっていた。
なんでそこにいて白鷺は気付かねぇの?馬鹿なの?残念なイケメンだなぁ、おい!
蝙蝠なんでテメェは風呂入って寛いでんだよ!!
と言いたいのをグッと耐える。
「・・・くそっ最悪だ」
「仕方ねぇだろ、お前だって楽しんだじゃねぇか」
いやお前に言ってねぇし、と脳内で突っ込みを入れるも白鷺は気付かない。
「ヤリ過ぎたなワリィ、箍が外れた…」
なんか少し優しくなっている白鷺がウザすぎて、腰も痛くてイライラしていた俺はやってしまった。
「お前に言ってねぇよ!」
「はっ?」
ああ・・・なんかデジャヴ。
蝙蝠がニヨニヨ笑っているのが殴りたいっ
「なんでだよっ!なんで俺ばっかりこんな目に合うんだよ!!」
今度は白鷺じゃなく奴の頭に乗っている蝙蝠に向かって叫ぶ、もうヤケクソだ。
『だからぁ〜魔界のノリですぅ〜酒の席で決まったんですぅ〜』
「ふざけんなっ!!」
ぼふっと白い枕に顔をうずめ、会話を拒否する。
泣きたい…
「黒琥…」
と、何故か白鷺がスプリングをきしませてベッドの横に座ってきた。
更に俺の髪を梳くように頭を撫でてくるので、思わず枕から顔を上げて白鷺の方を向いて後悔した。
…蝙蝠が白鷺の顔の前に垂れている。
器用に奴の髪の毛を掴んで白鷺の顔一面に蝙蝠が垂れている。
なんでここまでされてるのに白鷺は気付かねぇの?
しかも白鷺はその状態で俺に向かって話しかけてくる。
「お前、辛い思いしたんだろ」
『いやぁでもクリアしないとゲームは続きますよ」
蝙蝠も話しかけてきて、もう何がなんやら分からんから、白鷺は無視する。
もう泣きたい、ホントに泣きたいけど、俺は眉を寄せるだけにとどめる。
「どういうことだよ」と蝙蝠に向けて言うと、蝙蝠はにやりと笑った。
「お前を傷つけた奴を俺は許さねぇ」…白鷲黙ってて。
『だから攻略キャラとラブシーンを重ねて、ラブエンド迎えて恋人にならないとゲーム終わりませんよ』
「なんだよそれっ」再び枕に突っ伏す俺に、何故か白鷲が伸し掛かって抱きしめてくる。お前、蝙蝠が顔にくっ付けていてウザいんだよ!!!っていうか気付いて!!
「お前を強姦した俺が言うのも信じられないかもしれない…けど俺のモンになれ。」
「ウゼェんだよ!俺はお前が大嫌いだ!」
これは白鷲にむけて言ったのに白鷲は後ろから俺の首筋にキスを落としてくる。
「俺はお前が…気に入ってる」
誰も俺の話を聞いてくれないっ!!
と、ここで再び…ピコーンと嫌な音が響いた。
頭の上に選択肢が文字通り、浮かぶ。
今回の選択肢は選択肢ですらないってどういうことだよ!こらああッ!
白鷺の愛人ルートって何だよっ!怖すぎだろうが馬鹿野郎っ!!
しかもその後の選択肢って同じことじゃね?
▼帰宅して新ルートを模索してみない?
って選択肢じゃないよね!
▼愛人ルートも捨てがたいと思うんだが、新キャラとのエロHも見たいし、一回、家に帰ろうぜ(≧▽≦)b
捨てがたくねぇし!もうどこをどう突っ込めばいいのかすら分からねぇ!が、これしかないっ!
俺が念じた途端にピコーンと音がした。
ふぅ…さっきみたく時間が来て勝手に選択肢の選択がされる前に俺はなんとか選択することが出来た。
そして俺は俺に後ろから抱きついてきて隙のあった白鷺の意識を落として、やっと帰宅することになったのだった。
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