事件開幕

『ハーレム解散!?』


数日前に転校してきた、日向 蓮。

彼は、自分をハンター協会の狩人だと言い切り、吸血鬼たちのハーレム形成は可笑しいと宣言した。

『こんなの可笑しい!お前達は本当に相手のことを考えてるのかよ!』

そして更にはこうも続けた。

『お前たちの哀しい連鎖は俺が終わらせる!』

毬藻のような髪と瓶底眼鏡という暑苦しい格好をして、暑苦しいことを言う…真夜は冷めた目でそう思ったのだ。

人間には分からないだろうがハーレムを創るというのは本能に近い欲求だ。
食欲・性欲といったものを満たす大事な場所なのだ。
ハーレムには仕来たりや情緒もあり、吸血鬼達の中で文化的な位置づけも持っている。

それを人間に理解しろと言う方が無理かもしれないと真夜は俄然せずを貫いていたのだが・・・放置できなくなってしまった。

なんと吸血鬼の伯爵家の地位にあたる、この学園の生徒会副会長・月ノ宮 貴弘が日向 蓮を気に入ってしまったのだ。
なにを馬鹿なことをと思ったが・・・どうやら奴は本気らしい。

ハーレムの解散を宣言してしまった。

最悪だ。

最悪の事態だ。

いや俺よりも月ノ宮のハーレムの中の『花婿』達は更に絶望的な想いになっただろう。

ハーレムに入る相手というのは、吸血鬼の生涯ただ一人だ。
生涯仕える人間に『捨てられる』というのは・・・酷過ぎる。

故に『ハーレムの解散』は吸血鬼社会の中ではタブー化されているし、その実行には元老院を通じて何段階か手続きが要る。

その第一段階たる『解散宣言』を月ノ宮はしてしまった。

最悪だ。

これによって月ノ宮の下に入っていた吸血鬼達は月ノ宮という統制を無くした。
彼等を統制できる月ノ宮が彼等を切り離したのだから。
そして彼等の怒りと絶望が交じった巨大な力は転校生の日向 蓮に向かうだろう。

彼を殺すために。

ハーレムの主人を喪いそうになった時は・・・元老院の法によって正当防衛がいくらか認められるのが、彼等を後押しするだろう。

最悪だ。

「真夜さま、どうします」

武威の凛とした声に俺はフッと意識を浮上させた。

「あぁ…対処せねばな」

俺は生徒会室のソファに体を預けて、深々とため息を零した。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -