メットを通じて叩きつけるような音を風が響かせていた。
バイクを走らせてる横で、やはり蝙蝠がバイクの横をピッタリ憑いていて。
何度か『着いてくるな』と叫びそうになったけど、俺は我慢した。
どうやらこの蝙蝠は、俺にしか見えないようだから。

でも「『飛ぶの疲れた〜』とか言ってメットの上に取りついた時は手で叩き落とした。
横で俺とバイクを走らせる白鷺は俺に怪訝そうな表情を見せるが、ガン無視の方向で。

はたから見たら何もいねぇのに俺がメットを叩いてるように見えるんだろうなと思うと腹のうちがムカムカしてくる。
どこのキチガイだよ、って俺はキチガイじゃねぇ!!!

でもそれ以外は存外、面白い状況だ。
体に感じるバイクの風が気分を高ぶらせていった。

*****

埠頭から、一時間ほど走って町を突っ切って、工業団地建設予定地まで俺は白鷺を案内した。

入り口の立ち入り禁止という看板を無視して、アクセルを踏み込んでバイクをそのまま建設資材が山と積まれている敷地内へ滑らした。
マシーンが嘶くような高い音を響かせ、ドリフトで止まる。
俺はそのままメットを脱いでバイクから降りた。

視線の先には俺と同じようにバイクから降りて、メットを外している白鷺がいた。
流石に立ち振る舞いに隙がない。
嫌味なほど整った男らしい精悍な顔立ちをボコボコにしたくて血が疼いて、俺は悪童の様に笑っていた。

それでなくとも今日は俺は気分が最悪で、俺と同じくらい強い白鷺と拳を撃ち合うことで発散させたい。

「今日は俺は虫の居所が悪ぃんだよ、楽しませろよっ」

叫ぶように言えば、奴も犬歯を見せて獰猛な獣のように笑った。

「こっちの台詞だ、俺んとこの波多野と三木を可愛がってくれた礼をしてやる」

数日前にボコった、奴のチームのNo2とNo3の名前に俺はくつりと笑った。
罠に勝手に嵌って自滅したのはアッチなんだが。

「弱いのは可哀相だなぁ」

だがここで甲高い声で横槍が入る。

『美味しい、展開だなぁ』

「うるせぇ!!黙ってろ!!」

ライバルとの会話を遮られて思わず…やってしまった。
白鷺は何も言ってなかったのに。

「…何を言ってやがる」

はたして白鷺が眉間に皺を寄せてこちらを睨んでいた。
変な沈黙が落ちる。
埃っぽく、街灯の明かりしか届かないこの場所で、その沈黙はやけに重かった。

「…てめぇには関係ねぇよ」
「俺とお前の二人しかいないだろうが…なに言ってんだ。」

その通りだが、俺に返す言葉はなかった。
『此処に、いるよおおおお!!』と叫びながら蝙蝠が白鷺の顔の周りをパタパタしてるっ!!俺は懸命にも無言を守りつつ、蝙蝠をガン見してしまった。

なにあれ気持ち悪い。

「…まぁいい。口でやりあって、ガン垂れる前に拳で終わらせた方が早いだろう」

白鷺にガン垂れてたわけではないが、奴は不機嫌そうにしている。
俺は奴にあわせて両拳を構えた。
まだ蝙蝠が奴の頭をくるくる回ってるのは無視する方向で…

だが、またポンッとあの忌々しいファンシーな効果音が響いて。


▼土で目つぶし(≧ω≦)
▼正面から!!
▼後ろの角材で殴っちゃう♪


思わず、足を止めた。
なんか段々と選択肢が悪くなっている気がするんだけど!!
「目つぶし(≧ω≦)」って何だよっ!!頭が痛ぇ・・・
白鷺との喧嘩は正面からやりたいから俺は選択する。


▼正面から!!


その瞬間に俺は白鷺との距離を詰めて右のストレートを繰り出す。
けど奴はそれをいなして、逆に俺を引っ張り態勢を崩したところに足で蹴りを狙ってくる。それを俺は反対の腕で抑え込むと逆に屈んで腕の拘束を外して、奴の軸足に蹴りを放つ。だがそれは奴の軽やかなステップで外された。


ものの数分の出来事だ。


俺は血がざわりっと湧きたつのが分かった。






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