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選択肢の類似性
ゲームでよくある類似性のある選択肢。
恋愛ゲームではどれを選択しても、最初の数行の文章が違うだけで、後になって同じ文章に合流することがよくある。
おっ落ち着けっ!
瞬間的判断が大事だっ!!
鬱陶しいんだよっ!!
くそ!号泣だけは嫌だ!
こっこれだっ!
よしっ!!
心で念じれば選択肢は赤くなり、空中へ霧散した。
俺は上条を押しやる。
「やった」
選択肢の選択が出来た。
「・・・やったんですか?」
は?
「えっ?」
「貴方がヤッたんですか?」
んっ?
「な、なにが?」
上条は苦しそうに俺を見ている。
そうだ、俺は冬樹に抱かれたまんまだということを忘れていた。
元凶への対処を優先するあまり、現状への対応を疎かにしていた。
「ち、違うっ、そういうんじゃなくてっ」
なんで俺ばっかりこんな目にっ!
上条の背後で飛びながらニヨニヨ笑っている蝙蝠野郎をぶっ殺してやりたい!!
「ああああぁぁ!!」
俺は何だよっこれ何だよっ!!
思わず絶叫して頭を抱えた、すると何故か俺の涙腺が壊れたかのように涙が溢れる。
「えっ?なんだこれ?」
呆然と俺はぽろぽろと溢れる涙がどうして出るか分からなくて、濡れていく手の平を見詰める。
えっ?これってさっきの選択肢の号泣じゃね??
すると上条が息を飲む音が聞こえて。
次の瞬間に背中がしなるほどに強く抱きしめられた。
さっきの包み込むようなものとは違う。
熱くて狂うおしい程の強さで。
「黒琥っ辛いときは泣いていいんですっ!」
上条って良い奴だ。
でも多分、俺が泣いてるのは上条が思ってるのとは違う理由だけど。
俺はつい目の前の、腕に縋って、泣いた。
奴の腕に抱かれて俺は・・・少し救われていた。
あれ?全部してない?
選択肢の意味あるのかよ!!!
このクソゲーがっ!!
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