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虫唾が走るほどの不快さを感じて、惣一はその自分の中の感情の流れに驚いた。
ざわつく胸を抑え込むように着物袖の中で手を固く握りしめる。
人を人をも思わないで傷つけ、世の中の悪事という悪事に手を染めて汚れきった自分が、たかだが一回誰かと寝るぐらい何の感慨も無く出来る筈だ。

それなのに今、目の前の松田″を抱くなど、吐き気がした。
さっき欲望のまま血が繋がった弟を抱いた時は高ぶっていたのに…そう自嘲で嗤えてしまう。

(それは俺が畜生だからだろ。)
冷徹に、あくまで淡々と惣一は嗤う。
こんなことは何でもない。俺が誰かと寝ることなんてどうでもいいことだ。

(それで松田″の命が助かるんなら安い…)
どういう仕組みなのか分からないが、松田″は惣一の知る松田の体なのだと言う。
おそらく、この場を凌いでも松田″が本気になれば舌でも何でも噛んで死ぬのだろう。

(だったら要求を呑むしかない。)
それが組を背負うものとしては甘い判断だとしても…惣一にはこれまで腹心としていた部下をやはり、どうしても切り捨てられない。

「抱いたら松田から離れるんだろうな…化け物。」
惣一の言葉に、闇の中で人の形をしたものが笑った。

***
さっき歩いてきた道を引き返す。
この得体の知れない松田″に背を預けることはあり得なくて、廊下を先に歩かせれば、彼は足音を立てる生身だった…だが気持ち悪さは拭えない。

「失礼しますね」
なんとも軽い声で、普段の松田ならあり得ないぞんざいな態度で襖を開ける松田″は畳を進んで更に奥に進み、もう一度、襖を開けて、そこに敷かれていた惣一の布団の側に佇んだ。そして惣一を振り返ると、媚びるように笑う。

「…じゃあ若…俺のこと滅茶苦茶にしてください」

ゆっくりと松田がしゃがんで惣一の布団の上に跪き、ゆっくりとそのまま布団の上に横になると自らの手でネクタイを緩め、シャツをズボンから引き抜き、脚を誘うように開く。

それに欠片も表情を動かすことなく惣一は深く溜息をつくと浴衣を着たまま屈んで、緩んでいたネクタイを松田の首元に指を入れてシュルッとほどくと、次にシャツに手をかけ力任せに引き千切った。
ブチブチッという音をたててシャツのボタンが弾け飛び、松田の鍛えあげられた体が露わになる。
「っつ」
息を飲む松田の気配に惣一は不愉快そうに獰猛に笑う。

「勘違いするなよ…お前はただの慰み者だ。」

「ハハハッわぁ素敵ですねーでも貴方の相手はボクじゃないですよーハイ!」
と言って松田″が瞼を一度閉じて開けた。次の瞬間、惣一の腕の中にいたのは別の,惣一がよく知る松田゛だった。






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