2014/12/25/6:56

12/25/6:56 都内ビジネスホテル

あれから深夜にホテルに転がり込んだ俺であるが、ぐうすか寝れる程、神経は太くなくて睡眠不足だった。
そして一人でも居れるほど強くもなくて大学時代の後輩で、今は同じ部署に勤めている浅田 誠二を朝方に呼び出した。
浅田は短く整えられた髪に精悍な顔立ちで剣道もやっていたことから、とても男前だ。
「お早うございます」
そんな一言と、手から下げたコンビニ袋を通行料として部屋に上がった浅田はスーツ姿だった。
そういえは今年のクリスマスは平日で会社があるんだった。当然、浅田も俺も社畜なわけで仕事が待っている。
浅田は俺を一目見て、驚きで目を見開いて次いで溜息を零す。
「会社に今日は二人休みますって言っておきます」と言って入ってきた部屋をそのまま出ていった。
俺は会社に連絡するとか考えられなかったし、休む気も無いと言おうと思ったけど浅田が無理と思ったんなら無理なのかもと、何だかよく回らない頭で思った。

どれくらい時間がたったんだろう。時計を見ると7:07をさしていた。

さっきまで廊下の方で「・・・ます、・・訳・ません」とか途切れとぎれに浅田の声が聞こえてきていた。
本当にここはビジネスホテルで壁薄いなぁとかぼんやり思う。

そして、ガチャッとドアノブの回る音と共に部屋に入ってきた浅田はスーツの上着を部屋のクローゼットのハンガーにかけてネクタイも緩めた。
完全に会社休むことになったらしい。
年末のこの忙しい時期に休みをもぎ取れるのは、ひとえに普段から頑張っている信用のおかげだろう。
「先輩…なんで俺を呼び出したんですか」
ゴソゴソとビニールの中からホットコーヒーを出しながら浅田が俺に尋ねる。
俺はと言えば泣きはらした顔に、ベッドの上に座り、ただ浅田を見上げる。
「だってお前は俺と彰人のこと知ってるじゃん」
「・・・そりゃあ大学の時からの付き合いっすから、二人の事は知ってますけど」
幾許かの間の後に続いた言葉は不本意そうなものだった。
そりゃあそうだ男同士の惚れた腫れたに巻き込まれているのだ、不機嫌にもなるだろう、同情する。

「一人でいたくない、一人でいたら狂いそうなんだ」

でも同情するって思いながら俺の口から出たのは今の俺の現状だった。
言った瞬間に涙がとめどなく溢れて止まらなくなって、蛇口のように流し続ける涙に浅田はギョッとしたようだった。
慌ててティッシュ箱を引っ掴んで、バサバサと何枚も取り出して俺に渡す。
「わるい」
かろうじてそう言って、涙を拭う俺を見守る暇も無く。
浅田は立ち上がると風呂場へ行って何やらジャブジャブしてたかと思うと、暫くしたらホットタオルを手に俺のところへ戻ってきた。

「目にあててください、酷い顔してますよ。」

フワッと広がるホットタオルの熱に安堵する。ティッシュは浅田がぽいぽいっと捨ててくれた。
タオルを受け取って目に当てる。
じんわりっとなんだか安堵感が広がって・・・まだ涙が出る。でもそれもタオルが吸ってくれた。暫くして顔を上げる。
「スッキリした」
「でしょ」
そしてサッと浅田はタオルを俺の手から奪って洗いに行こうとする。
「いいよ、俺が洗うから」
誰だって人が使ったタオルなんか洗いたくないだろう。そしたら浅田がブッと吹きだした。
「今更っすね、今度、高い店で奢ってくれたらチャラにしますよ」
明るくて気遣い出来る良い奴だ。
「ありがと」
そう言うと浅田は寝てて良いですよって言って破顔した。
浅田の背中を風呂場へ見送ってベッドに横になる・・・横の時計を見ると時計は7:24をさしていた。
「浅田が来てくれたから・・・時間過ぎるの早いや」
そして・・・横になった俺に、睡眠不足の為か急激に睡魔が襲ってきた。
「ごめん、昨夜寝てなくて、ちょっと寝るから、」
声を一応かけると、遠くの方で「おやすみなさい」って声が聞こえた。

12/25/7:34 都内某所アパートの一室

鈴木彰人はどこか疲労した体を引きづって帰路についていた、見慣れたアパートが見えた時は不思議とホッとする。
朝は目覚めの空気に満ちていた。この清涼な空気は吸えば胸一杯に爽やかさが広がる。
「寒いな」
でも12月末ともなれば、感じる寒さは酷かった。彰人はとんとんとんと軽快にアパートの2階に続く階段を登った、彼が呼吸をするたびに白い息がふわりっと漂う。
そして部屋の前まで来ると手袋をつけたまま玄関横のベルを押した。
中に同居人がいるのだから鍵を出すのは面倒くさい、ピンポーンと部屋の中で呼び鈴が鳴っているのが外からでも聞こえた。
「早くしてくれ、勇」
寒い、寒い、まだこの時間なら会社には出てなくて逆に会社へ行く準備をしている時間だ。きっとすぐにドアを開けてくれると思う。
けどいくら待っても人の気配を感じなかった。
「寝過ごしてんのかな」
そしたら俺が起こしてやらないとな、同居人としての務めだ。そう思って先程はしぶっていた鍵を取り出して鍵穴に差し込んでドアを開ける。
ガチャリッという音とともにドアが開く・・・そこには真っ暗な室内が広がっていた。







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