2014/12/25/1:45

Time:2014/12/25 1:45 
from:彰人
sub:Re

ゴメン、今日やっぱ会えない。
-----END-----

数分前に震えたスマホの画面を見ても、告げる内容は何も変わらない。
知らず吐きだした溜め息は誰も聞く人はいない。俺はスマホをベッドの上に投げた。
ポスッという軽い音と共にベッドに着地したスマホは、画面を直ぐに暗くして沈黙する。
それを確認せずに立ち上がって、珈琲を飲もうと台所に向かう。
俺には同居人がいて、二人暮らしだ。

今日はこの部屋に、もう一人、本当は人が居る筈だった。
・・・だったというところが悲しいところだ。

本当はクリスマス・イブに会う約束だった。
俺の最後の一世一代の賭けみたいなもんだった。
『クリスマス・イブ 時間欲しい』って言った。

その日に彰人が付き合っている彼女と過ごす計画だと知っていたから、だからそう賭けをした。
彰人にとっての俺をはかるために願った、でもその結果はメール一通。
それでアッサリと奴は俺に突きつけて、俺は賭けに負けた。

「今日やっぱ会えないじゃねぇよ…もう日をまたいでるだろうが」

だが分かってたことだろうと、もう一人の自分が俺に語りかける。
わかってる、もう中学の時から何年も何年も思い知らされてきたし、今回もそれを思い知っただけだ。
結局、俺は奴にとってセフレだし、社会人になって本命の彼女が居る今、あまり深入りしたくない相手なんだ。

鈴木彰人とは幼馴染だ。どれぐらいのっていうと小学校からの付き合いになる。
それから中学、高校、大学と腐れ縁は続き、社会人になって同じ会社に就職した。
何てことは無い幼馴染…とは、とても言えない関係に俺たちはあった。

中学の時に互いに持て余す性欲からお互いを慰めあったことが切っ掛けだったのかもしれない。
初めてのキスも全部、互いだった。
学校帰りに歩きながら「キスってしたことある?」から始まって夕焼けの何の変哲もない帰り道にキスをした。女の子とするなら噴水の前とか、夜景の綺麗なところとか色々考えたんだろうが、あいにくと俺達は男だった。

「意外とふつーだな」
心臓がバクバクしてるのに俺がそう返すと彰人は「キスって別に味しないな」って今なら当たり前だろって思うようなことを言った。それに俺は「確かに」って答えたんだから、俺も相当ウブだった。

そうやって性に目覚めた俺たちは鮮やかな快楽にとても抗えずに毎日のようにシタ。
道路の影で舌を絡めてキスしたり、互いの家で触り合った。
クチュクチュと響く淫靡な音が部屋中から聞こえるみたいだけど足を絡めあって互いのモノを愛撫し合って、快楽にとけてる彰人の顔を見てれば何もかも嬉しさと恥ずかしさと快楽に変わった。

「勇(ゆう)、キスしながらシテみようぜ」
ペロッと出される彰人の赤い舌を俺は犬のように貪る。
「んっはぁっ彰人っんぅっ」
クチュクチュと唾液と舌を絡ませて、息も何もかも彰人に貪られて、貪って高め合う。
そんなことを何日も、何カ月も数えきれないぐらい二人でした。

そうしたら続きもしたくなるのは当然のことで。そして高校一年の夏に俺は彰人に抱かれた。
場所は彰人の部屋で彰人のベッド。
男子高校生二人でラブホに行けるほど俺たちの心臓に毛ははえてない。

中学三年間の間に着々と開発されて、後孔ですら玩具とかで快感を拾うことを覚えた俺の体はローションで充分にほぐされて、甲高い水音と一緒に彰人のモノを食んでいく。
グチュッと音を立てて入れられた瞬間、正直、ブッ飛んで頭が真っ白になるぐらい気持ち良かった。
ペニスの裏のしこりを突かれれば甲高い声を上げて、ペニスからトコロテンのように白濁を出して後ろで何度もイッた。
女の様に男のペニスで俺は喘いだ…いや彰人の女にされた。

グチュグチュッヌチュッパンパンッ
絡めて叩きつけられて奥を抉られて快楽を塗り込められて・・・

「あぁぁっんぅっあっもうっイクッぁっまたイクっ」

「ハァッくぅっ…出すぞっゆぅっ」

ドクッドクッグチュッ

熱を注がれる、中から火傷する様な熱。
アイツが俺の中でゆっくりと出されて、体に溶ける様な沁み込む様な感覚を感じながら俺は彰人に堕ちた。
出しきって息をつくアイツの腕の中で、俺も息を零しながら体が塗り替えられたのが分かった。
気持ちが良すぎて、もう戻れないと分かった。
こんな快楽を体が知って女を抱けるとは到底思えなかった。

それからも求められるままに何度も抱かれて、俺の体はゆっくりとだが確実に男に慣れて、男に調教されて抱かれる快楽を覚え込まされていった。

シャワーを出しっぱなしにしたまま風呂場で後ろから突かれ、体位を変えて両足を抱えあげられて奥の奥まで犯されぬいたり、騎乗位で自分で自分のイイところを学んでしまったり。家族が旅行でいない時に紐でモノを結ばれて嬲られるSMのようなこと。

高校生の未成年が覚えた快感は麻薬のようで、彰人なしじゃあいられないぐらいだった。
幼馴染に抱き染められながら、けれど互いに好きだとかの言葉があった訳じゃない。
ずるずると惰性のような関係だったことは認めよう。

大学に上がって二人で同棲を初めて・・・増々、毎日のように俺が彰人に抱かれていたある時・・・彰人に彼女が出来た。

急な事だった。
なにしろ彰人の誕生日の深夜0時に彼女から「誕生日おめでとうございます」っていうメール一通から始まって、なんとなく雰囲気が良くなって彼女の方から軽く「付き合いませんか」の一言があって彰人は彼女と付き合うことにしたのだ。
俺の小学中学高校と大学を合わせて彰人と過ごした12年と数か月の期間のことなど、まるで彰人にとっては小さいことのようだった。

ああ可愛い女の子って簡単に俺の大事なもの手に入れちゃうんだなと思い知った。
ショックで笑うことなど出来ず、同居しているから否応なしに顔を合わす彰人の姿もみることも、ケータイでメールフォルダなどで、どうしても出てくる彰人の名前を見ることも辛かった。

「付き合ってみることにした」ってあっさりと何でもない事のように報告した彰人に「頑張れよ」って言いながら。俺は『早く別れちまえ』と思っていた、最低野郎だ。
でも彼女がいながら俺と同棲して、俺のことを相変わらず激しく抱いていた彰人も最低だったかもしれない。

「あ、いま嫉妬しただろ?」って言って「仕方ないな抱いてやるよ、ほら朝までグチャグチャにしてやるから」って俺を犯し抜く彰人。「彼女がいるだろっ彼女にしてもらえよ!」って切なくて泣きながら拒むオレを押し倒してキス一つすれば俺は彰人には抗えずに彰人がもたらす快楽に溺れた。

シャワーの音に混じってグチュグチュッと俺の両足を持ち上げて激しく突き上げる彰人の首に両手を回しながら俺は喘ぐ。
「はぁんっぁぁっいぃっはぁっあきっとっあっもっとぉぉっ」
彰人の精悍な顔に栗毛に染めた髪からシャワーの雫がおちてゆく、すげー格好いい。
見惚れながら犯されぬいて、今この瞬間、彰人は俺だけのものだって思えれば幸せで涙が溢れた。
全部シャワーに流されてゆくけれど、泣いている俺に気付いた彰人はニッと嗤う。
「はぁっ、ゆう、出すぞっ・・・」
彰人は俺より優位だと彼自身知っているのだ。
「きてぇぇっあきっ俺のなかっいっぱいっしてぇえぇっ」
俺に拒否権は無い。
「くぅっうぅっ」

ドクドクッグチュップシャッ

中にいっぱい注がれる感触が好きだ。
彼女がいる親友に女のように抱かれて悦ぶ最低な俺と、男で親友の俺を女のように犯し中に精を注ぐ最低な彰人・・・最低同士だ。
そして神様は最低な俺の願いを叶えてくれて、一ヶ月ほどで彼女と彰人は別れた。
「なんか面倒くさい」っていう一言で。
「お前最低だな」っていったら「でも勇は最低な俺の側に居るじゃん」と言ってキスされた。
クチュクチュと舌を絡めて、息すら飲み込んで高ぶりあってから顔をあげて、彰人は言った。
「最低の俺は、お前が間違って孕むほど今、抱きたい」
その台詞に体が甘く震えて快感の予感に蕩けた俺も最低な”女”だった。

大学時代、爛れきった関係の俺達は”仲のいい小学校からの幼馴染”というカテゴリで周りからは見られていて、面白がったサークルの仲間とか学部の仲間が就職先も一緒だと凄くないか。っていう話題になり
二人で同じ会社を受けまくった・俺には打算的な考えもあったが彰人が面白がって同意してくれたのは有難かった。

・・・そして晴れて二人で社会人になった時、彰人は″本当に好きな人″が出来たのだった。

それが今回、クリスマスデートをしている彼女だった、彼女の為に俺を抱くことすらしなくなって久しい。今年の新人で入ってきた彼女は俺達とは3歳下。4月の新人研修で出会って彰人が彼女を好きになってからだから、もう8か月、俺は彰人と”普通の同居人”の関係でいる・・・だから今日賭けをしたのだ。

本命の彼女と過ごすと計画を知っていたから…彰人を試した。
少しでも俺の気持ちを慮ってくれるんなら頑張る、違うんなら…全ての関係を清算するって。
だから…俺は、あらかじめ纏めておいた荷物を持って大学から二人で暮らしてきた部屋を後にしたのだった。彰人は俺の荷物が少なくなってきていることにも気づかなかったみたいだけど、俺は着々と準備をしていたのだ。

「ありがと、さようなら」

そう一言書き置きを残して、俺は2014年12月25日・・・一つの関係を終わらせた。
外に出ると信じられないぐらい寒くて、寒くて、あまりの寒さに涙が出た。
そう寒さから涙が出て止まらないんだ。
断じてこれは心が痛いからじゃない。
近くにあるビジネスホテルまでの道が凄く遠く感じるから泣けてくるんだ。

・・・そうオリオン座の下で思っていた。

そんなクリスマスに号泣してビジネスホテルに移動した俺と。
朝に戻ってきて書き置きに驚いて俺を探し慌てふためいた彰人。



それは、明日以降のお話。






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