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銀髪の転校生を連れて食堂から去ってゆく、かつての「親友」の背を見送って風紀委員長・影宮 御琴は知らず感じていた胸の痛みに眉を寄せた。
時が止まったように、まだ全然区切りをつけていない自分に自嘲するしかない。
親衛隊総代・緋酉 慎…彼はかつて中学時代の影宮の同室だった。

いまより体も心も成長しきっておらず、柔らかな感性でずっと影宮は緋酉を見ていた。
クラスも部活も一緒。居住空間も一緒で、何より一緒に居て楽しくて心地いいと思える緋酉。
一緒に共同スペースで雑魚寝して朝一緒に登校するなんてこともザラだった。

あの時、恋をしていた。
それとは気付かなかったが、透明でガラス細工のようにキラキラと、ただただ綺麗な恋をしていた。
幼いながらに気を引きたくて他の人間に気がある素振りもしたし、中学生らしい性欲で互いに触れたこともある。
周りには緋酉を好ましく思う人間も居たが、自分が彼に近しいと思っていたから自惚れていた。
彼には、そんな気など全く無かったのにだ。

それはなんて茶番劇(バーレスク)だろうか。

(だから俺は俺が許せないし、お前も…)

そして影宮は唇を噛みしめ、それを振り払うように風紀委員に食堂からの撤収を指示した。

***

(なんかエライことだったみたいだ。)

柳沢は自分のクラスに戻って何となく今のこの事態が大変なことだと理解しはじめた。
彼はAクラスだったのだが、皆藤とスポーツ特待生の南方そして緋酉を伴ってAクラスに戻るとクラスメートから悲鳴とも歓声ともつかない歓待を受けた。

「柳沢くんって本当はそういう姿だったんだね!」
「緋酉さまだ!」
「格好いい!なんで最初からその格好じゃないの!」
「緋酉さま、格好いい。どうしよう。」

飛び交う言葉はおおむね好意的だ。最初に柳沢が編入生として彼等の前にたった時は非難の視線の方が大きかったのにだ。
その変化は劇的といっても良い。
緋酉はそんな周囲に頓着することなく「君の席はどこだ」ど尋ねてくる。

(随分,騒がれてるの慣れてる。俺もこんだけ自分を持てたら)

そうしたらきっと、強くなれるような気がした。
雄飛はそして綺麗なものをみるように、あるいは焦がれるように緋酉の横顔をジッと見つめていた。





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