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『3.夢ならばここで終わらせて』
「勇者」と人は俺を呼ぶ、人を脅かす魔物を打ち払い。
魔物の頂点に立つ魔王を倒すための存在が俺・レインだ。
だが俺たち勇者パーティーは今、とんでもない危機に見舞われていた。
というのは街を荒らすグリフィンの群れを、やっとの思いで追っ払って数日すると高位悪魔が落雷と共に街に現れたのだ。
その落雷で街の中心部は吹っ飛ばされ、そのまま戦闘に突入した。
現れた悪魔の名は魔界伯爵ダンダリオン・・・300の軍団を率いる東方の大悪魔。
実際に高位悪魔が現れるなんて始めての事で俺達は戸惑ったが、負けるわけにはいかないっ、俺は勇者だ。
術式と魔方陣を思考に思い描いて俺は腕をダンダリオンへ掲げた。
『火より紅きもの 夜の闇を切り裂く陽の閃光 神の名の下に来たれ!』
カッと灼熱魔法が悪魔を襲う、だが悠然と美しい魔物は笑っていた。
「この程度かっ勇者っ!」
手を掲げ、魔法はダンダリオンの手で受け止められた、そして見る間に俺の放った魔法が『作り変えられて』漆黒の炎へ変貌を遂げる。
戦慄した・・・
「返そう、勇者」
玲瓏な声で言われた意味を理解する前に、その炎が何倍も大きくなって俺の目の前へ迫っているのが見えた。
避けられないっ!!
「レイン!」
パーティーの白魔術師・レナの声が同時に聞こえて、俺の視界に影が射す。
予想した衝撃は俺には来なかった。
何故ならパーティーのレナが防御結界を展開させていたからだ。
バチバチッと結界が炎とぶつかる音がして、数瞬後には二つとも掻き消えた、と同時にレナが崩れ落ちる・・・彼女には所々、焦げたような後があった。
急いで支えて、思わず眉を寄せてしまう。
「くそっ」
そして頭上から声が聞こえた。
「興醒めだよ勇者諸君・・・
もっと強くならないと我々には敵わんぞ?
これではいつでも捻り潰せてしまってつまらん・・・此処は引いてやろう。
脆弱な人間ども。」
そして悪魔は土産だと呟いて・・・手を空に掲げた。
その手に魔力が集まっていく、俺は悪魔の考えがわかって思わず叫んでいた。
「やめろおおおぉぉ!!!」
「止められない弱き勇者はそこで見ていろっ!」
漆黒の炎が奴の手の平から放たれて、街のあちこちに飛び散り破壊の限りを尽くすのを俺は見ていることしか出来なかった。
そして奴は傷付いた人間を見て残虐に笑うと宙にふわりと浮いて傲然と言い放つ。
「勇者よっ俺は魔界伯爵ダンダリオン!!
俺が憎いなら俺の下に来いっ!
俺を倒しに来てみろっ!
いい退屈しのぎにはなるだろうっ!
ハハハハハハハッ
哄笑が響くなか奴は黒い霧に飲まれて姿を消した。
残されたのは破壊尽くされた街。
巻き込まれて、殺された住人
傷付いた仲間達
そして無力な俺。
夢なら覚めて欲しいと願うほどに・・・悲惨な現実。
だが俺は自分の聖剣を握り締め、誓う。
必ず強くなって、魔界伯爵ダンダリオンと魔王を倒してやるっ!!!
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