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城は山を二つ越えた崖の上に聳え立っておりました。堅牢なそれはとても騎士一人に攻め落とせそうなほど無防備ではございません。
というよりも崖を自然の要塞とし敵の攻撃を跳ねつける堅牢な砦でございました。

アーサーはランスロット、ガウェイン、トリスタンを側に侍り王の格好をしてまずは城下町へ入ろうとなさいました。
するとバタバタという羽ばたきとともに、一羽の鴉が一行の前に入り込んで一行を見下ろす木の上に羽根をおろしたのでございます。
神聖な古代を思わせる威厳を備えた鴉。
その鴉は会釈をすることもなく、ひとときもとどまることなく、しかし、貴人淑女のような威厳を保ちながら、樹の上に止まると、それっきり、そこで動かなくなりました。

その鴉の振る舞いが、あまりに厳めしく品位あるものだったのでガウェイン卿が前に進み出て尋ねます。

「そなたは、トサカこそ刈り込まれていたとしても、臆病者には見えはしない。
夜の岸辺からさすらってきた、恐るべき不吉な古代の鴉よ、
夜の支配する冥土の岸辺で何と呼ばれているのか、そなたの御名を唱えよ。」

鴉はそして言った、「Nevermore」と。

鳥がかくも明瞭に言葉を喋ったのを聞いて、一行はひどく驚きました、その答えが、意味も脈絡もなかったとしても。
その鴉は、豊かな繁りをみせる幹に独り止まったまま、喋ったのはその一言だけ。
その一言で、彼の魂を吐き出してしまったかのようでした。彼はそれ以上、彼は何も喋らず、羽毛一本も動かしませんでした。

一体、この不吉な古代の鳥は…この気味が悪い、不恰好な、ぞっとするような、やつれた、不吉な古代の鳥は、
「Never more」と呻くことで、何を伝えようとしているのかガウェイン卿は考えます。
そして腰にさしていた炎の魔剣を引き抜きますと火が炙られるように鞘から零れました。

「魔性のものよ! 鳥にしろ悪魔にしろ、預言者に違いない。
頭上を覆う天に誓って、我々が共に崇める神に誓って俺に語るがいい!
その言葉が、我々の別れの合図だ! 鳥よ、悪魔め!」

そして更にガウェイン卿は果敢にも叫びます。

「出て行け! 夜の支配する冥土の岸辺へ!
羽一枚も残すんじゃない、貴様の話した嘘を思い出させるようなものは何一つ!
俺の心から貴様の嘴を抜いていけ!」

ついに振りかぶる剣から放たれた炎は樹に止まった鴉に直撃し火が燃え盛りました。

そしてその炎の中、鴉はそして言ったのでございます、「Never more」と。

鴉は、飛び回ることもなく、今もなおそこに止まり。
一行の視界の上、幹に止まって身を焼かれながら今もなお、そこに止まっているのです。
鴉の眼は、夢見る悪魔の眼のようで、緋の光が鴉の体を燃やし、
焔の中ゆらめくその影から、抜け出すことはないだろうと不意にガウェイン卿は理解しました――

…Never more、もう二度と!

それはこれからの彼を暗示していたのでございます。




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