過去編3〜2〜

「あと悪いんだが」
そう前置きしてレガンは、俺に言った。
「皆の魂を助けたいから…聖なる鎖で、皆を解放してくれないか。」
そこで俺はやっと納得した、『アーサー王の魂の欠片』を持っている俺を選んだ理由を。

惨い死に方をすると魂は苦しんで光の環に入れないのだ、そして終いには哀れな魂も『幽鬼』になってしまう、誰も自分の親や仲間には安らかに眠ってもらいたいものだろう。
普通なら司祭が祈りを捧げれば良いのだが…彼等の場合は全員奴隷狩りされたから、魂の救済が出来ないのだ。俺に命じれば良いのに、それをしないレガンの態度に好感を持った。
「命令すればいいだろ、変な奴だ。」
フッと思わず本音が漏れる。するとレガンはガシガシと灰色の髪をかいて項垂れた、彼の耳が垂れている。
「…お前の命を削るからな…命令なんて出来るわけないだろ。」
イイ奴だな、コイツ。
そんなレガンに俺は大丈夫だとばかりに微笑む。
「じゃあ大事な人のために祈れ…それが力になる。」
覗き込んだ金色の瞳は、俺をしっかりと映し、そしてその目を細め「嗚呼」と応えてくれた。
けど彼が俺をどんな風に見ていたのかも俺は気付かなかった。

俺の方もHPも昨日の夜より回復してるし大丈夫だろう、俺が詠唱をはじめると風が光をまとい俺の周りを回る。

『はじめに言葉ありき そなたらの真名を我に捧げよ 聖なる王の名の元に 鎖を断ち切れ!!
アン・チェイン!!』

俺の手から光が溢れ、その光は鎖のように白い墓標をあまねく照らし苦しんでいる魂を一つひとつ光の中へ戻してゆく。その光景をレガンは灰銀の瞳に映し、じっと見つめていた。
魔物の時よりは良い、だってもとは善良な魂なのだ。
そして、あらかた魂を光の中に戻した頃だろうか俺は胸に込み上げてくる慣れた痛みに膝をついた。
「ゥッゴホッガハッ」
口から血が溢れると、コストとして命を削られる俺をレガンは屈んで、そっと抱きしめる。
「ありがとう」
噛みしめるように紡がれた声。
「やっと親父たちは眠れっ…」
不自然に途切れた声とくぐもった声に俺はそのまま顔を上げなかった。
だってこの誇り高い男は、今は顔を見られたくはないだろうと思うからだ。


どれくらいの時間が経ったのか、おそらく数分だと思うがレガンは少し目を腫らして立ち上がると、口の端を血で汚した俺を見下ろし…

「そうだな、水浴びしよう」

京都へ行こうみたいなノリだったっ
思わず、吹きそうになったオレをおもむろに屈んでレガンは俵担ぎした。
なぜそこで俵担ぎを選択したのか問いただしたいのだが、レガンの揺れる尻尾を掴んでいいのか?
*****
しばらく担がれていて、下ろされた時には清らかな川のせせらぎと広々とした池が広がっていた。
上流には小さな滝もあり、打たれれば気持ちよさそうだ。
周囲には青々とした草が生い茂っている、フカフカの其処へレガンは俺を降ろした。

「ここで水浴びをしよう、お前の服も洗うぞ」
そう言って、レガンは自分の皮なめしの上着を脱ぎ始める。
鍛え上げられた戦士の体はあちこち傷があるが男でも見惚れるほど逞しかった。

俺も起きた時から着ていた絹の上衣を脱ぐ。
さっきの吐血で僅かばかりが血が付いていた衣は魔物討伐の時に鎧の下に着ていたものだから、昨夜から着替えてないんだろう。少し汗で気持ち悪い、水浴びは正直有難かった。
パシャッと水音がしてレガンが裸で池の中に入っていくのを横目に、俺も躊躇したのは少しで全部脱いで、洗う上衣だけ持って池に入った。男同士で裸を気にしても仕方がない。

レガンはスイーッと川の中を楽しそうに泳いで「冷たいけど気持ちいいだろ!」と話しかけてくる。

確かにその通りなので笑って相槌を打ちながら、俺はオレで最初は汚れてしまった服を洗う。
血だから水で簡単に落ちるのは有難かった。
そして洗い終わった服を、いったん川から上がって木の枝に引っ掛ける。
そして少し体を洗おうと川に戻ろうとしたところで、川の中からこっちに手を振っているレガンに気付いた。
「ちょっと来いよ!」
彼は滝つぼの方へ泳いでく、何だろうと思いながらも俺はレガンの方へ泳いでいった。

*****

ドドドドドドッと滝からは水が流れ落ちている、小さいながら立派なものだ。
滝の周囲は水流でえぐられて足が付かない位に水深が深い、俺は泳げるから良いけど、でもそれにしたって足がつかないっていうのは不安だ。
そんな俺にレガンは笑った、彼の灰色の髪が水分を含んで張り付いている。
「この滝の下をくぐって、あそこの岩にタッチする遊びやろうぜ!」
「えっ危なくないのか?」
潜るってことだろ、けどレガンはあっさり破顔する。
「いつもやってるから俺は慣れてんだけどさ、水流がぐるぐるして楽しいんだよ。」
「そうか」
レガンがいつもやってるなら大丈夫だろ。そう思って俺はついついやる気スイッチを押してしまった。
男ってこういう馬鹿なことが好きな生き物なのだ。
もはや病気だ仕方がない。
「じゃあ俺、やってみる」
「危なくなったら助けてやる!」
「いや大丈夫だよ!」
そして俺は笑って、滝の側から潜水を開始した。
すぐに白い泡がドドドッと逆巻いている滝の下に入った、大丈夫だ簡単だ、そう思っていた途端に視界が反転する。ドッと下に押しやられて体勢が崩れた。
(ツッー…!!)
思わずガボッと息を吐きだして、直ぐに不味いと思うと、余計に混乱して手足を無闇矢鱈に動かしたら、上か下か分からなくなった。滝の圧迫は終わらない、おかしいと思ったら水流が底で逆巻いてることに気付いた。
(巻き込まれたッ)
ハイスペック聖王 溺死。
(嫌すぎるッ)
と今度は動きすぎたからか苦しくなってきた、息が持たないッ!と思ったところで…逞しい腕が俺を背後から引き上げてくれるのが分かった…ああ本当に助けられてしまった。
光に照らされた水面が水中から見るとキラキラとして天国みたいだった…縁起でもない。

バシャッンッと空気に触れた途端に俺は盛大に噎せた。
「ゴホッゲホッハァっハァっハァっ」
「おい大丈夫か?水底に持っていかれて焦ったぞ…」
逞しい腕が俺の体を後ろから抱えて、足のつく浅瀬まで運ぼうと泳いでくれる、背泳ぎみたいな感じ。
「ゴホッハァッタキガッハァッ」
「…いい、いいから、しゃべんな。ゆっくり呼吸しろ。」
男として色々負けてるような気がするんだが仕方ない。
その間、俺は荒い呼吸で空気を肺に送り込んでいた。
そしてゆっくりとレガンはちょうど腰位の水位のところで出ていた石に俺を掴まらせた。

呼吸も落ち着いてきて、足もついて、石にも掴まっているから俺はもう大丈夫というように後ろ向きにレガンを振り返る。するとレガンは予想に反して…俺の背中に浮き出ていた『聖痕』をまじまじと見ていた。
アーサー王の魂の欠片を持つ俺の背には広げた羽根の聖痕がそれは見事に現れている。
僅かに光っているその聖痕は息を飲むほど美しい。
「アンタのこの聖痕はじめて見た」
「…まぁ自分ではよく見えないんだが」
ちょっと勿体ないが、それもまぁ良いかなと思う…たまに鏡で映して見たりしている。するとレガンはスルッと俺の背中の聖痕を撫でた。
「綺麗だ、羽根が見事に背中一面に広がって。」
「有難う」
そのままレガンの指は羽根を一枚一枚確認するように動いて、俺は体が震えた。
「なんだ敏感だな」
クッと低く笑うレガンは、今度は顔を聖痕に近付けてくる、吐息が背にかかった。
「ちょっ止せっ」
そのままピチャッとレガンに背中を舐められて俺はビクッと震えた。
暖かい感触と人に触れられる強烈な感覚だった。
「あっ待てっやっ」
逃げようと動いた身体を力強い腕が引き戻す、
『このまま舐めさせろ』
そして『命じられれば』俺はそれを受けいることしか出来ない、カチャッと首の鎖が僅かに鳴った。
「つっ…」
のけ反る様にレガンが俺の鎖を引っ張る。
そのまま首にもピチャリッと舌を這わして犬歯でガジッと甘噛みしてくる。
「ぁっ」
ビクリッと震えた俺に太くレガンは嗤う。彼の金色の瞳が瞳孔が細まって捕食者のそれになっている。
「…ブッ飛びそうだっ」
そして俺の裸の背と、彼の胸がくっ付きあうと後ろの獣人が欲情していることを知った。
俺の肌に男の欲望の証が擦り付けられる、ドッと汗が出た。
「っ待ってぁっぁっ」
そのまま男の手が俺の欲望の証に伸ばされて、握られれば快楽に脳髄が溶ける。
ゆるゆると梳かれれば、俺のモノは簡単に立ち上がった。
そもそも18歳以上解禁のゲーム内での性行為は…非常に感じるようになっているのだ。
『…こっちを向け』
玲瓏な声で命じられて。
ゆっくりと振り返ればギラギラと獣の本性を晒したようなレガンが俺を見下ろしていた。
水に濡れる彼は非常にフェロモンが出ている、良い男だと思うけど…なんでオレが欲望の対象なんだと疑問には思うものの逆らえずに、そのまま男らしい顔が近づいて触れるだけの口付けをされる。ペロッと唇を舐められて俺は感じていた。そしてペロペロッと何回か俺の唇を舐めたレガンは、今度は俺と自分のペニスを両方擦り付けて愛撫しだした。
レガンのは俺より大きくて熱くて、目眩がしそうだ。

グチュッヌチュックチュッ

いやらしい水音が響いて、俺は初めての感覚に頭が真っ白になる。
「ふっやぁっぁっ」
「ほら、ここっ気持ちイイッだろっ」
グリッとペニスの先端を強く擦られれば、俺は仰け反って後ろの石に躰を預けた。
「あああっぁぁっ」
「おっとっ」
感じすぎて震える体が川に落ちないよう男らしい腕が俺を捕らえる。
『お前もイイところを一緒に擦るんだっ』
そう命じられれて『隷属』させられている俺の手は自分とレガンのモノを梳いて…快楽を分け合った。そして根を上げたのはオレが先だった。もう俺のペニスははちきれそうで、これがゲームの中なんて信じられない位だ。
「やぁっイクッもぉだめっぁぁっ」
互いに互いを的確に追い詰め、愛撫して、頭が真っ白に溶けている、男同士だからイイところが分かり過ぎてる。
「つっ俺もだっイケよっ見ててやるからっエロい顔をオレに見せろっ」
荒い呼吸のままレガンはニィッと肉食獣のように獰猛に嗤った。
それに誘われる様に、俺は耐えていたものを吐きだす、
「つっあああぁっはぁっんっぁぁっ」
「くぅっぁっぁぁ…」
それに誘われる様にレガンも俺の肌に欲望を撒き散らして、互いにイッて…熱が溶けたのだ。

どれぐらいそうしてただろう。
イクと熱が冷えて俺はレガンと向き合う、レガンは俺と視線を合わせるとハァッと息を零して笑い。
「…悪い」と言った。

居た堪れない。
この居た堪れなさは、エロ本で抜いていたら母親にそれを見られたぐらい居た堪れない。
「謝るぐらいなら、するなっ」
と叫んだ俺は悪くない。そのままレガンは罪滅ぼしのつもりなのか自分が吐き出した精でよごれた俺の体を綺麗にしてくれた後、横抱きして岸まで運んでくれた。






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