海〜抱合〜
翡翠は今度は真貴をうつ伏せにさせると真貴の腰をグイッと持ち上げた…見えない恐怖から真貴の顔が強張る,そのまま翡翠は後ろから真貴を貫いた…
「ああぁぁぁ…」
真貴の甘い声が漏れて…背が弓なりに反る…それを翡翠はクスッと笑って…
「随分,順応性が有るね…教えがいが有るよ…」
そのまま真貴の背をツーッと大きな手で撫でる,それだけでどうしようも無くビクリッと快楽に震える真貴…
濡れきった蕾は何の抵抗も無く翡翠を受け入れ…真貴の太股に先程,内に注がれた翡翠の精液が真貴自身の愛液と共に伝い落ちた…
翡翠はもう遠慮無く真貴の内を激しく突く…真貴の内はもう溶けて…翡翠と溶けて…もう体の境界すら曖昧で…
二人は確かに一つに成っていた…
そのまま翡翠はグチュ,ヌチュリと真貴の体を貪った…本当に甘い体だ,と想いつつ…真貴の胸を掬い上げるように愛撫すると途端に翡翠を締め付ける真貴…
「つっ,はぁ…」
本当に何て感度が良いんだ…
数え切らない程に女を抱いている翡翠ですら,もっと欲しく想ってしまう…甘い体…その全てを舐めて食べていると堪らなくなる…
「ふあぁぁぁ…翡翠…もっと…きて…おね,が…もっと…」
媚薬が身の内の炎を熱く燃えさせるとは言え…漆黒の髪を乱して,数刻前まで怒りと侮蔑を向けていた翡翠に支配され…翡翠の抽挿に簡単に理性を飛ばして,快楽をねだる真貴…
それに翡翠の支配欲がユラリッと揺れて…
虐めたくなる…もっと,もっと…真貴の方から翡翠をねだらせたかった…
あの『景時』とかいう『想い人』のことを…その胸から締め出そうという想いがあったことは否定出来ない…
自分の玩具は自分だけの物だ…
そう玩具だ…
少しばかり心が揺れて…気に入った…
ただの玩具…
そう想わなければ,ならない…
翡翠は抽挿を止めると白い真貴の背に口付けを落とし,次々に紅い刻印を刻んで…そして真貴の首筋に紅い華が咲いた時…
「ひ,すい…お願い…ちょう…だい…」
ベッドのシーツを掴んで快楽に耐えていた真貴の妖艶な桜貝の唇から翡翠の望む言葉が零れた…
「何?よく聞こえないよ…」
翡翠はクスクスッと笑ってズルッと楔を真貴の引き抜く…
「ふあっ!!」
突然の刺激にビクッと震えて,真貴は声を出してしまった…そして分かりきっているのに楔を引き抜いた翡翠に非難を感じていた…
「何?何が欲しいの?ちゃんと言いなさい…」
翡翠は意地悪く真貴の入り口をグチュッグチュッと翡翠自身で微かに出たり入ったり愛撫する…決定力の無い執拗な快楽に真貴は,もう耐えられなかった…
「翡翠が…ぁん…欲し…ん…」
頬を真っ赤に染めて恥ずかしいことを言う…けれど翡翠はソレでは許してくれなかった…
「何処に,どんな風に欲しいの?真貴…」
「そんなぁ…言え…あぁ…」
『言えない』と言おうとすると翡翠はたった一回だけズクンッと真貴の最奥まで楔を打ち込んだ…
その熱さ,その深い快楽に真貴の喘ぎ声が漏れる…そしてまた翡翠は真貴の内から楔を抜いてしまって…
「フフッ…何処に…どんな風に欲しいのかな?」
もう無理だった…真貴には恥とかそんなの…この快楽の前にはどうでも良いことのように思われた…
「ひ,翡翠の…熱くて太いのを,私の内側に埋めてグチャグチャにして…いっぱい突いて…翡翠で,いっぱいにして…」
自分の中の何かが壊れていく…支配されることに悦びを感じてる…もう駄目…
そう真貴が想った時に待ち望んだ熱が真貴を満たした…
ヌチュ,グチュ,ピジュリ,パアァン,ピチュ
「ああぁぁぁぁぁぁ!!」
気持ち良い!!気持ち良い!!翡翠!!翡翠!!翡翠!!
「良い子だね…おねだりが上手で…望み通り…私で体を一杯,突いてあげるよ…君が私でお腹一杯に成るまでね…」
そのまま最奥まで突かれる…真貴の内側から燃え立つ熱は再び真貴の全身を覆おうとしていた…
「ひあぁあぁぁ!!翡翠!!翡翠!!」
何度この名前を呼んだのか分からない…景時の名では無く…翡翠の名を…
ズクンッズクンッと真貴の弱い所を中心に攻め立てられれば…もう真貴に耐える事など出来はしなかった…
『真白な熱』が真貴の全身を包む…
「ぁぁぁ…あぁんああぁぁぁ…」
吐息のような甘ったるい喘ぎ声を出して真貴は高みへと上って…
「っつ…真貴…出すよ…」
翡翠もまた再び己を真貴の内へ解き放った…クッタリと真貴が,力を抜き,そのままベッドに崩れ落ちると…翡翠自身もズルリッと真貴の内から抜けてパタタッと液が真貴の内から零れた…
そしてそのまま翡翠は息の乱れている真貴の横に転がる…
その途端,ビクリッと震える細い肩に苛立って手を置くと無理矢理に自分の方を向かせた…そして後悔する…
真貴の漆黒の瞳が怯えたように翡翠に向けられた事で…彼の胸に冷たく苦いモノが滑り込んできたのだ…
それを彼が理解し…受け入れるのはまだ先のことで…
翡翠は,その暗い想いから…真貴に,酷薄な笑みを向けて…言うつもりも,想ってもいなかった言葉を紡いだ…
「初めてにしては,とても楽しんで,乱れていたね…私の腕の中で…」
途端に真貴の漆黒の瞳が見開かれ…翡翠は優しく…残酷に愛を囁くように言った…
「君の初めての『男』は私のようだけど…当然だが…君など一時の戯れだから…君より良い女や美しい女など私には掃いて捨てるほど居る…」
見る見るうちに透明な雫が其処に溜まっていく…それを翡翠は出来るだけ無表情に見つめた…
「君など私には必要無い…ただ目障りだったから抱いてあげたんだよ…良かったじゃないか…一生,忘れられない初めてで…私が初めてな女は幸せだよ…良かったろう?」
視線を外そうとしても翡翠の力強い手が真貴の顎を抑えて無理だった…翡翠はつぶさに真貴を見つめる…ともすれば恋人のように…けれど冷ややかな残酷さで…
もう耐えられなかった…真貴は涙を零す…止めどなく翡翠の手も真貴の頬も濡らしていく…
それは真珠のようだった…その清らかさと美しさに翡翠は息を飲んで…すぐに自分の言った言葉を後悔するが…取り消す事など出来はしないので仕方なく,指で丁寧に拭った…
何故,泣き出すと翡翠はいつも涙を優しく拭うのか真貴には理解出来ない…唇で,その綺麗な指で…翡翠は真貴の涙を拭う…けれど…その暖かさは,今の冷え切った真貴には少しも助けにならなかった…
あまりの悲哀で…言葉に出来ない…気にくわなかったら陵辱して屈服させるという翡翠の言葉…それ程までのことを自分はしただろうか…
どう考えても…してない…だから真貴のボロボロに傷付いた心は穏やかな癒しを切実に求めた…
景時さん…景時さん…景時さん…逢いたいよ…逢いたい…抱き締めて欲しい…ギュッてして…『好きだよ』って囁いて欲しい…
でも貴方に会わせる顔が無い…私は翡翠に抱かれた…抱かれて…感じて…翡翠の手でイカされた穢れた体…
「かげ,と…」
桜貝の唇から零れかけた『想い人』の名に翡翠は涙を拭っていた手を止め,ギリッと歯噛みすると,真貴の顎を固定したまま…その唇を貪った…
歯列をなぞって…クチュリと舌が交わって…唾液が真貴の顎を伝う…
「ふあぁん…」
こんな風に身を触れると真貴は簡単に翡翠の腕の中に堕ちてくるのに…心の奥は他の男のモノなのが気に入らなかった…
それは自分も同じことだったけれど…
けれど…この真貴は心も体も自分の…自分の…
玩具だ…
そう大切じゃない…壊れたら捨てる…飽きたら捨てる…ただの玩具…
そうでなければ,いけない…
そう『真貴』以外を想うことなど有り得ない…
そう想って翡翠は,また真貴のすべらかな肌に手を這わして…少しずつ押し倒していった…
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