素直じゃないところもかわいい

衣擦れの音と、二人の零れる吐息が夜の部屋に響く。

掻き抱かれて、口付けを交わして

「弥一っ」

思わず、自分を抱いている男の名を呼んでしまう。
あの時、何もしないと云われても、それで終わる筈はなかった・・・互いに惹かれて、熔けてゆくような感覚。

深く息をついて呼吸を整えようとしても、心の臓が脈打って落ち着かない。

「いいのか?」

そう意地悪げに問う弥一は酷く艶美で余裕そうな表情をしている。
それが気に入らなくて顔を背けると、途端に身の内を穿っている弥一自身で奥を突かれた。

グチュッと弥一を求める音が聞こえてきて恥ずかしくて堪らない。

「やめっ」

口付けられて言葉すら吸われる。
間近で交わされる視線が熱い。

そして、たっぷりと口付けた後に、弥一はニヤッと悪童のように微笑んで。

「素直じゃねぇところも良いな、真貴」

と耳元で囁いた。
その熱に煽られて・・・自分が自分でないような感覚・・・

想ってる人に抱かれることの幸福・・・幸せ。
そう幸せで、堪らなかった。

泣きたいほどに・・・
花魁とはいっても女郎の自分が哀しくて、仕様が無かった・・・




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