あんたの気持ちなんてとっくに知ってる
夜が明ける・・・綾なす空が見える。
肌を重ねた朝は、こんなにも切ないものだったのかと花魁である自分がそれを感じるなんて・・・
「起きたか」
視線を欄干に向ければ悠然と煙管をくゆらせながら、弥一がこちらに視線を向けていた。
「・・・・・」
何も言えない、この目の前の男はこんなに綺麗だっただろうか、朝焼けに照らされて・・・元々色素の薄い髪が金色に輝いている。
なにか言わないと、なんて想うなんて・・・
「・・・戯れでも一夜にしては楽かったでありんす」
そう艶然と笑ってみせる、余裕のふりをして、また今夜から他の男に抱かれなければならない自身を慰め、救うために・・・
すると弥一はくすりっと笑う。
「じゃあ今夜も、明日もオメェさんに楽しかったと言わせてやるよ」
そう云った、言葉に頭が追いつかなくて・・・
そんな真貴の姿に弥一は艶然と微笑んで、スッとこちらへ足を向けて、今だ褥の中にいる真貴を抱き起こす。
そして・・・
「おめぇさんを身請けするって云ってんだ」
そう柔らかい響きをもって耳元で囁いたのだ・・・
驚きと、喜びが胸に湧き上がって止め処がなく・・・言葉に出したのは憎まれ口で。
「・・・花魁を身請けなんぞ出来る甲斐性がありんすか?」
だがその言葉は口付けで中途で消されてしまう・・・そしてたっぷり口付けた後に。
「おめぇさんの気持ちなんて、こちとらとっくに知ってる」
色素の薄い硝子玉のような瞳が頬を染める真貴を映していた・・・
END
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