確かめ合って、触れ合う
牛車の中でも友雅は真貴を離さなかった…ずっと,ずっとその腕に抱き締め,その膝に抱えて…口付けの優しい雨を降らせる…
頬に…唇に…首筋に紅い華が散って…真貴は真っ赤になって両手で友雅を押しやろうとするが逆に手を取られて『可愛い手だね…』と囁かれて舌で舐められる。
「ふわぁ!!」
それにビクッと反応すると友雅は耐え切れないといった様子で牛車の中で真貴を押し倒した…
「愛してる…」
囁かれる言葉が熱い…此処にいる友雅は誰だろう少なくとも真貴はこんな友雅を知らなかった…
「あっあの友雅さん!!今って私が白龍を呼んでから,どのくらい経ってるんですか!?」
「ん?」
真貴の胸に顔を付けて心音を確かめて安心していた友雅はそこでハッとした…
そうあまりの嬉しさで忘れていたが…真貴殿は『アクラム』を愛していたのだ…自分でも嫌になる程の大きな失敗だった…
「すまないね!!あまりに嬉しくて…つい…」
パッと離れた暖かさにキョトンとして次いで真貴は苦笑を零す。
「別に嫌じゃ無いですよ…私,友雅さんのこと好きですから…」
『大丈夫だ…お前は目覚めた時,『私』を忘れるのだから…』
その言葉を真貴は知らない…消えた『想い』があることを真貴は覚えていない…
「本当に?あの鬼のことは,どう想ってるんだい?」
友雅は嬉しさからの胸の熱さを,こられつつ尋ねる…これ以上…真貴を傷付けたく無い…だから真貴が別の男が好きなら…それでも良かった…
ただ…生きていてくれるだけで良い…
「鬼?誰のことですか?」
友雅は真貴を注意深く観察する…けれど彼女が嘘を言ってるようには見えなかった…
「アクラムのこと…だよ…」
やはり口に出すのは辛い…けれどやはり真貴は首を傾げた…
友雅は愕然とする…こんな事があるのだろうか…白龍を呼んだショックからかもしれない…真貴は『鬼の首領』の事を全て忘れて…友雅を想っているようだった…
「真貴殿…」
微かに握る手に汗が滲んだ…
「私のことが好きかい?」
途端にカアァァァと真貴の頬が染まる…そして…
「はい…友雅さん…」
その『想い』を一生忘れないと想った…
そしてその数日後…橘右大臣家にて祝儀が執り行われた…
帝からも祝いの言葉を贈られ,京の貴人達が祝福するなか…
本宮真貴は橘真貴となり…友雅の北の方になった…
それに一番,喜んだのは藤姫を初め左大臣家の人々と苦難を分かち合った八葉の面々だった…
一度は死んだと勘違いをし葬儀までしてしまったのである感慨も深かった…
とにもかくにも…こうして二人は互いの手を取った…
友雅さん…長い長い夢を見ていた気がするんです…どこか哀しくて愛しい夢を…ずっと抱えていたい夢でした…
そう…私もずっと,ずっと長い暗闇の夢を見ていたよ…その中でゆっくりと自分が朽ちていく夢だった…
でも良いんです…今は貴方が側にいるから…
愛してます…
でも良いよ…今は君が側にいるから…
愛してるよ…
この『想い』はずっと…二人で紡がれてゆく…
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