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今回の仕事は夕方から始めて、朝には終わらせて欲しいという内装依頼だった。
俺は仕事が遅くなることを予想して狩沢達とは別れていた。
だが、ある程度の内装を終わらせた所で店のオーナーが来て、少し手を加えたい部分が出来たから今日はもう上がって良いといわれてしまった。
まぁ仕方が無いと思って帰宅の徒について、サンシャイン通りを歩いていると、知り合いが道端に座っていた。
金髪にバーテン服でグラサンを胸元にさした彼は間違いなく、
「静雄?」
池袋の喧嘩人形と恐れられる彼だった。
それにしても酒臭い、酔っている。
すぐに状況を理解して俺はしゃがんで静雄の頬をぺちぺち叩く。
揺さぶるのは酔いが回るからダメだ。
「おい大丈夫か?静雄」
「んっ」
ダメだ、完全にまわってやがる。
本当は吐かせれば楽になるんだが、こいつは酒に弱いから酔うことに慣れてなければ、吐くことにも慣れていないからな。
「仕方ねぇ送るか」
幸い静雄はブクロに住んでる、俺は静雄に腕を回して支えた。
「ほら静雄立て、支えてやるから」
「ぅ・・・かど、た?」
「そうだお前んちまで送ってくから」
「あれトムさ、」
「上司と飲んでたのか?」
じゃあその人どこに行ったんだ?と辺りを見回したら、こっちに小走りに近付くドレッドヘアーの人物を見つけた。
「あっ悪い、介抱しててくれたのか、今、タクシー捕まえててな」
「いえ静雄とは知らない仲でもないんで」
「んぅ」
「しずおー大丈夫かー」
静雄の上司が静雄に幾分大きな声をかけると静雄はゆっくり頷く、
「今からー送るからなー」
「っす」
静雄のこんな酔った姿が珍しくて、俺はまじまじと静雄を見てしまう。
なんか面白いな、ほっとけない。
「あの俺、送りますよ」
「んっ?」
ドレッドヘアーの静雄の上司が俺を見て「でもコイツこんなんだから自宅案内できねぇぞ」と返された。
確かに、だが俺は何回か静雄宅へは行ったことがあったから「何回か行ったことあるんで」と説明すれば彼は少し考えたがニッと笑った。
「じゃ頼むわ、明日はソイツ休みだし」
そして彼は俺とは反対側から静雄に肩を貸して二人でタクシーへ静雄を運んだ。
タクシーの後部座席へ静雄を放り込んで、俺はその隣りへ滑り込む。
戻しそうになったら世話しなきゃならないからだ。
「んじゃ頼むわ、静雄にヨロシク」
「伝えときますよ」
そしてドアが閉まって、タクシーは目的地へと走り出す。
ちらりと見た腕時計はPM23時13分をさしていた。
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